Intelは、米ネバダ州ラスベガスにおいて開催されるCES 2019の開幕前日となる1月7日、記者発表会を開催し、市場投入が遅れている次世代プロセス技術の10nmプロセス採用製品の投入計画などを明らかにした。

数カ月以内にIce Lakeの量産を開始

同社でClient Computing Groupを率いるGregory Bryant上席副社長は、まず、デスクトップPC向け第9世代Coreにラインナップ拡充を発表した。エントリーモデルとなるCore i3を含む6製品を追加する。また、ノートPC向けにも第9世代Coreプロセッサを投入する計画であるとした。

  • 第9世代Coreプロセッサのラインナップを拡充

  • モバイル向け第9世代Coreプロセッサも第2四半期に投入する予定だ

さらに、次期メインストリームCPUとして、開発コード名“Ice Lake”の量産出荷を数カ月以内に開始し、一部パートナーの製品は年末までに店頭に並ぶ見通しであることも明した。

このIce Lakeは、10nmプロセスで「本格的に」製造されるはじめてのCPUかつ、新マイクロアーキテクチャ“Sunny Cove”(サニー・コーヴ)を採用する初の製品となる。

  • Ice Lakeの特徴

  • Ice Lakeを披露するGregory Bryant上席副社長

  • Ice Lakeチップ

マイクロアーキテクチャに改良を加えるとともに、AI性能を向上させるべく、Intel DL Boostと呼ぶディープラーニング(Deep Learning)の推論処理を高速化可能な命令セットを追加した。

1TFLOPS以上のグラフィックス性能を発揮する第11世代の内蔵GPUを統合するとともに、Thuderbolt 3(USB 3.1 Gen.2を含む)や次世代WiFi規格のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)を統合したモバイル向けSoCを先行させる。

記者発表会では、PegatronやWistron製のIce Lake搭載ノートPCを紹介したほか、AIによるイメージ検索のデモを披露。既存のCPUベースの推論よりも、Ice LakeのDL Boostを利用した方が、約2倍の性能向上が見込めるという。さらに、DELLがIce Lakeを搭載した次期XPSの外観を公開し、10nmプロセスへの移行が、順調に進んでいることをアピールした。

  • Ice LakeのAI推論デモ

  • DELLのClient Solutions Group担当社長Sam Burd氏はIce Lake搭載の次期XPSを披露

また、Bryant氏は「Project Athena」(プロジェクト・アテナ)と呼ぶ新しいPC体験を生み出すプログラムを発表。人々がノートPCに求める、よりインテリジェントでシームレスなユーザー体験を、AIや5Gの統合により実現していく考えを示した。

  • Project Athena

AcerやASUSTeK Computer、Compal、DELL、Google、HP、Lenovo、Microsoft、Samsung、Sharpなどが同プログラムのパートナーとして、2019年中に製品化を実現すべく開発を進めているという。

  • Project Athena協賛企業

Foveros採用の「Lakefield」を披露

さらに、Intelは新しいモバイルPCを実現すべく、技術的革新にも力を入れる。同社が「Foveros」と呼ぶ3次元パッケージング技術を使い、10nmプロセスで製造されるSunny CoveベースのBig CPUと、同じく10nmプロセスを採用するAtomベースのSmall Core 4つ、GPUコアを統合したシリコンレイヤー、異なるプロセス技術で製造されるI/Oやメモリも3次元的に積層した新プラットフォーム「Lakefield」(レイクフィールド)を披露した。

  • 3次元パッケージング技術Foverosにより、ハイブリッドCPUを実現するLakefield

  • Lakefieldの特徴

  • 10nmのSunny CoveベースBig CPU、4つのSmall Coreを統合

より長時間のバッテリ駆動時間と、すぐれたパフォーマンス、高速な通信性能を、小さな基板サイズで実現できるようになるとして、わずか12㎜四方に収められたLakefieldをベースとしたシステム基板を公開するとともに、開発中のリファレンス基板も公開された。

  • Lakefieldシステム基板

  • Lakefield搭載システム

次世代Xeon「Cascade Lake」の量産も開始

Intelの10nmプロセス戦略は、クライアントビジネスにとどまらない。Data Center Groupを率いるNavin Shanoy主席副社長は、次世代Xeonスケーラブル・プロセッサ「Cascade Lake」(カスケード・レーク)の量産出荷開始をアナウンスした。

また、次々世代では、Sunny Coveマイクロアーキテクチャを採用するIce Lakeベースのへと進化すると説明する。Cascade Lakeにも搭載されているAI推論エンジンのDL Boostは、より大容量のメモリ空間をシステムメモリとして扱えるOptane DCメモリとの組み合わせにより、性能を飛躍的に向上できるという。

  • 量産出荷が始まったCascade Lake

  • Intel DL BoostによるGPUによるAI推論とのパフォーマンス比較

このほか、CPUのみならず、5G分野にも10nmプロセスを採用したSoC「Snow Ridge」(スノー・リッジ)を2022年に投入する計画も明らかにした。

  • Intelは5G基地局向けにも10nmプロセス技術を採用

  • Snow Ridge搭載5G基地局システム

  • Snow Ridgeのデモ。さまざまな用途に応じて帯域を割り当てることができるため、遠隔手術に最優先の帯域を割り当てられるというもの

  • Ice LakeベースのXeonスケーラブル・プロセッサによるAIレンダリングのデモ