11月28日、日本仮想通貨ビジネス協会の11月度勉強会において、NEM.io財団の日本支部「一般社団法人 NEM JAPAN」の設立が発表された。

NEMとは多目的に使えるブロックチェーンのこと。通常はプログラミングを行う必要がある機能がWebAPIとして提供されているため、ビジネスで採用する際に必要な開発コストを抑えられるうえに、スピーディな導入ができるのが特徴だ。

もう1つの特徴として、安全な設計が挙げられる。NEMと聞くと、コインチェックの流出事件が記憶に新しいが、あれは取引所のウォレット(仮想通貨の口座のようなもの)管理方法に問題があったのが原因。NEMブロックチェーン自体に原因があったわけではない。実際、2015年3月29日に最初のブロックが作られて以来、ブロックチェーンのプロトコルが原因のアセット流出はゼロだという。

NEMブロックチェーンの特徴

今回日本で設立されたNEM JAPANでは、エンタープライズ用途で選ばれるブロックチェーンになるために、エンジニア向けのセミナーや教育イベントの実施、実装サポートといった普及のための活動を行っていくという。

NEM JAPAN 代表理事の古賀大喜氏は「NEMは海外のプロジェクトであることもあり、これまで日本人にとって敷居が高いものでした。NEMブロックチェーンについて何か聞きたいことがあった場合に、気軽に相談できる窓口がなかったのです。そのためNEM JAPANは、ブロックチェーン事業をしたいという人が、相談窓口としてもご利用いただければと考えております」と、団体の役割を述べた。

NEM JAPAN 代表理事の古賀大喜氏

すでにいくつものユースケースが生まれているNEM

また、勉強会ではNEMブロックチェーンの活用事例についても触れられていた。

マレーシア国際イスラム大学では、闇市場で学位が売買されるという課題を解決するために、学位証明書のハッシュ値をブロックチェーンに記録して検証できる学位証明システム『e-Scroll』を実装。そこに、NEMブロックチェーンのソリューションである『LuxTag』が使われている。

2019年にラスベガスでオープン予定のエンターテインメント体験施設「Kind Heaven」では、デジタルコレクター商品の希少性を証明する用途としてブロックチェーン技術を活用。また、同様の例として、VR/AR内のデジタルアセットをNEMブロックチェーン上で発行・流通・管理することが可能になる『VERSES』の例も紹介された。

日本においては、政治と有権者の建設的な議論を促すプラットフォーム『ポリポリ』と、以前弊誌でも紹介したスポーツチームや選手をトークンによるギフティングで支援する『Engate』、歩くとブロックチェーントークンが付与されて、それを飲食店で使うことのできるヘルスケアアプリ『FiFiC』などのブロックチェーン採用サービスを紹介。FiFiCについては、特定の場所にトークンをあらかじめ配置しておき、実際にその場所を訪れた人がトークンを受け取ることができる機能が検討されていることに触れ、観光の集客にも活用できることを強調した。

希少性の担保やトレーサビリティなど、さまざまなシーンでの採用が進むブロックチェーン。これからも多くの事例が出てきそうだ。ビジネスにおいて効果的な活用をするにはどうすればいいのか、少しでも興味のある人は、NEM JAPANに一度相談してみるといいかもしれない。

(安川幸利)