石田「次はいよいよシグマの大曽根さん、大変お待たせしました(会場笑)。今回、パナソニックの山根さんに声をかけられてどう思われたんですか」

  • シグマ 商品企画部部長 大曽根康裕氏

大曽根「そうですね。驚きましたし、ちょっと迷っていたのが吹っ切れた感もありました。シグマにはSAマウントというオリジナルのマウントがありますが、これは一眼レフレックス用のマウントなんですね。

社内にはまさにいま、30年に一度の変革期が来ているという認識があり、たとえば前回はα7000やEOSマウントが登場して、MFからAFのマウントに変わるというのがあったんです。そのとき私はエンジニアで、両方のレンズを設計しなくちゃならなくて大変だったんですが、その変革期がまた来ている。レフレックスからミラーレスへマウントが変わるぞと。

そこで、シグマでも3年前からショートフランジバックのSAマウントを開発していたんですね。そこへお声がけいただいた、というタイミングでした」

石田「じゃあ、それまでは、やはり自社でやろうと思っていたわけですよね」

大曽根「はい、当社は独立独歩性の強い会社ですので。自分たちでやろうと思っていましたし、レンズもそろえられると思っていました。ただ、心配もありました。

お客さまがその判断にどれだけ喜んでくれるかわかりませんし、新しいマウントをシグマ一社で育てていくのも難しいと思いまして……。Lマウントはまず機械的な良さで社内の定評がありましたし、何よりも電子技術、ソフトウェア技術の高いパナソニックさんが付いているということが非常に強かった。

マウントを育てていくのは、これからは機械技術じゃなくて電子ソフトであって、新しい通信やそういうものが入ってくることでマウント自体が成長していけないと、時代に取り残されたマウントになってしまいます。そういうことを社内では心配しながらの進行でしたので、Lマウントというのは、効果的で魅力的だと。特にお客さまにメリットがあると考えました」

石田「シグマさんは、協業という形はやったことないですよね」

  • Lマウントアライアンス誕生秘話が語られる

大曽根「はい、初めてです。ただ、パナソニックさんとはフォーサーズフォーラム、マイクロフォーサーズフォーラムでご一緒させていただいていたので、面識がありました。これも大きかったと思います。また、ライカさんというこの業界(カメラ)を作った会社さまと一緒にできるというのも魅力に感じました」

ちなみに、シグマといえば、ユーザーとして気になるのがマウントアダプターだ。これについても話題に。

大曽根「既存の当社製品で、NC-11というシグマ製のEOSマウントレンズ、SAマウントレンズをソニーさんのEマウントに付けられるアダプターがあるのですが、これが意外と業界に影響を与えている可能性があるんではないかと思っています。なので、これに類したものをLマウントに関しても作ろうと思っています」

そして後半は、写真家の相原正明氏と河野英喜氏がパネラーに加わった。相原氏は風景、河野氏はポートレートの分野で主に活躍されている。

  • 後半からは写真家のお二人も加わってより豪華に

石田「お二人とも、すでにS1(試作品)で試写されてみたと思いますが、その感想をぜひ」

相原「世の中が“ミラーレス=コンパクトで軽い”という偏った間違った方向に行きつつある中で、S1は、カメラが写真を撮る道具であると同時に、持つ喜びを感じさせてくれるもの、ということを再認識させてくれました。

置いておくだけでカッコいいんですよ。情報端末機のような、かっこよさという面で物足りないカメラじゃない。大枚はたいて買って良かった、久しぶりに写真機を持ったなという、満足感のある大きさを感じました。

ある程度の大きさがあって重いというのは、風景写真でも大切なんです。軽いと風で共鳴したりて、ブレてしまうので。あと、ファインダーがとても見やすい。これなら、オーストラリアの砂漠で1カ月くらい撮っても目が疲れないと思います。

画質については、画素が上がることでモノクロの階調がより豊かになることに期待したい。S1では、LモノクロームDの表現力が大きく向上するのではないかと思います。

私は、いつか日本画の長谷川等伯(安土桃山時代の絵師)の松林図屏風みたいな画を狙っていきたいと思っているので、S1Rの高画素とLモノクロームDを組み合わせて、今年の冬あたり、どこかの森に籠もってしっかり撮ってみたいですね」

  • 写真家 相原正明氏

河野「私も、しっかりしたカメラだなと感じました。グリップは指が余らずしっかり握れるし、ファインダーも、中がまっすぐに四角に見える。ヌケの良い見え方をするのも特長で、今使っているG9と比べてもより良くなっていると感じました。

色については、G9になって肌色に赤みが加わって、すごくみずみずしい肌色表現ができるようになったのですが、これが今回のSシリーズにも受け継がれて、よりブラッシュアップされているんじゃないかと。数枚撮ってみての印象ではありますが、そう感じましたね」

  • 写真家 河野英喜氏

和やかな雰囲気の中、ときおり、聞いているこちらがドキドキするようなエピソードも飛び出した今回のパネルディスカッション。それは、まさにユニークな3社が協業によって思いもよらない化学変化を起こしそうなLマウントアライアンスを象徴する会だった。 フルサイズミラーレス第4勢力がカメラ業界に巻き起こす、新しい風に期待したい。

  • 当日登壇されたみなさん

  • 余談だが、会場の東京国際フォーラムでは、パナソニック100年の歴史に残る代表的な製品が一堂に会した。かなりの見応えに筆者も夢中!