インターネットイニシアティブ(IIJ)は、中国のサイバーセキュリティ法に関するマスコミ向けの勉強会を開催した。今や世界第二の経済大国であり、日本とは切っても切れない関係にある中国だが、インターネットの世界では何かと特殊な位置づけにある。中国に進出している日本企業への影響等はあるのだろうか。

  • 中国のサイバーセキュリティ法を知ろう - IIJ勉強会から

中国のインターネットというと、日本のすぐ隣の国ながら、ネット検閲・ブロッキングシステム「金盾」(グレートファイアウォール)の存在、GoogleやFacebookへの接続規制、たびたび伝えられる大規模な検閲など、良くも悪くも自由を尊ぶ「The Internet」とは一味違う、社会主義国家らしい存在という印象が強い。そんな中国では2017年6月から「中華人民共和国網絡安全法」(通称:中国サイバーセキュリティ法)が施行されている。

施行時に少し話題になった程度で、その後は日本であまり詳しく報道されないこともあり、一般の人にとっては、なんとなく「また何やら検閲が行われているのか」という印象ではないだろうか。今回、IIJグループの中国法人であるIIJ Global Solutions China Inc.の副総経理・技術統括部長、李天一氏が講師として登壇。中国サイバーセキュリティ法が施行された背景と、法遵守に関わる課題、そして日本企業が取るべき対応について解説した。

  • IIJ Global Solutions Chinaの李天一副総経理・技術統括部長

    IIJ Global Solutions Chinaの李天一副総経理・技術統括部長。流暢な日本語で複雑な法律関係の話もスラスラと解説してくださった

まずサイバーセキュリティ法についてだが、これは2015年に中国で施行された「国家安全法」の第25条を根拠としており、中国の習近平国家主席が2016年に行った「サイバー空間における中国の国家主権を守るべき」(いわゆるサイバー主権)という趣旨の発言に拠って作られたものだという。

国家安全法25条は「サイバー空間はセキュアな環境であってしかるべき」という内容であり、サイバーセキュリティ法は主にデータのセキュリティ確保と越境時移転時の取り扱いについて規定されている。中国においては電子決済などが急ピッチで普及しているが、その反動として個人情報の流出などの問題も起きており、こうした問題に対応する必要があったわけだ。

  • 中国のサイバーセキュリティ法を知ろう - IIJ勉強会から

    当然ながら中国国内向けの問題だけでなく、安全保障上(=軍事的)な意図も含んだ法律として理解するべき内容だろう

現実の世界と比較してみると、現実世界で国境を超えて人やモノ、カネが行き来する場合、ビザが発行され、誰がいつどこへ行ったかは記録される。サイバーセキュリティ法は、このロジックをサイバースペースに持ち込んだもので、人やモノの代わりにデータがどこへ行ったか、越境したかをこと細かに管理・記録することにフォーカスしているわけだ。

  • 中国のサイバーセキュリティ法を知ろう - IIJ勉強会から

    現実世界のロジックをサイバー空間に持ち込んだところがユニーク。サイバー空間で「越境」というのは定義が曖昧に思えるが、金盾の内と外ということか