「カビ」といえば、よく我が家の食パンに生えてくる忌ま忌ましいヤツ。タンスの中の衣類にも生えることがあります。カビ毒という毒素も産み出すため、家の中で浮遊するカビ菌は危険な存在です。が……日本酒や味噌の麹はカビだし、抗生物質(ペニシリン)を産み出すのもカビ。カビにはいい面と悪い面があります。
カビが衣類を汚したり、毒素を排出することを防ぐため、カビの働きを抑えるのが、シャープのプラズマクラスター技術。同社は3月8日、プラズマクラスターイオンに、カビの生長を抑制する効果があることを発表しました。
プラズマクラスター技術とは、プラスイオンとマイナスイオンを同時に空気中へ放出するシャープの独自技術。浮遊するカビなどの菌類やウイルスの表面にくっつくと、プラスイオンとマイナスイオンが結合して酸化力の強いOHラジカルとなり、細菌やウイルスなどの働きを抑制します。
プラズマクラスターの主な作用は、「除菌・消臭」「静電気除去」「肌保湿効果」の3つ。除菌に関する実験において、浮遊しているカビや、壁などに付着しているカビに対して、プラズマクラスターが除菌・抑制効果を持つことは検証済み。ですが、カビのどのような状態に、どれほど効果があるのかはわかっていませんでした。
カビは、胞子が発芽したあと、菌糸が生長します。生長の過程で毒素を排出し、次世代の胞子を作る、また胞子が発芽して……以下エンドレスなわけです。なので、「カビを生長させないこと」が大切なんですね。プラズマクラスターイオンに、カビの生長を抑える効果はあるのでしょうか。
今回は、5種類のカビを用意して、生育ステージ別に、プラズマクラスターイオンがカビの生長にどう影響するのかを調査しました。実験は、「胞子の発芽、および生長に関する効果検証」「菌糸の生長および胞子の形成に関する効果検証」「形成された胞子に関する効果検証」の3つ。
カビの入ったシャーレを円筒容器に入れ、その内部にプラズマクラスターイオン(1立方センチメートルあたり2,000,000個)を3日間照射します。
まず胞子の発芽、および生長に関する実験。3日間プラズマクラスターイオンを照射し、その後コロニー(菌の集合体が目に見えるサイズとなったもの)の数をカウントした結果、カビは5種類とも、ほとんど発芽や生長が見られなかったことが実験データから明らかになりました。
菌糸の生長および胞子の形成に関する実験では、プラズマクラスターイオンを3日間照射したあと、コロニーの色や大きさを観察。同様の条件下で、プラズマクラスターイオンを照射していないものと比較しました。すると、シャーレ表面において、コロニー拡大は見られず、胞子の形成も抑制されていることが実験結果からわかります。
形成された胞子に関する効果検証では、プラズマクラスターイオンを3日間照射したあと、胞子を採取して別のシャーレに移し替え、12時間培養しました。発芽した胞子の数を顕微鏡下でカウントし、発芽率を調査すると、アスペルギルスとぺニシリウムの2種類は、発芽率が大幅に減少していました。しかし、リゾプスに関しては、大きな効果は見られません。
形成された胞子までプラズマクラスターイオンが届きやすいカビと、届きにくいカビがあります。リゾプスは、胞子のうという殻の中に胞子が入っているため、プラズマクラスターイオンが届きにくい構造なのです。
今回、プラズマクラスターイオンがカビの生育ステージそれぞれにおいて、抑制効果を発揮することが明らかになりました。シャープは今後、医療や医療機関、農業や食品、野菜工場などにプラズマクラスター技術を応用していき、エアコンを含めたBtoB市場の売り上げ拡大を目指していきます。