群戦略の中核的存在のファンド

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは総額10兆円をこえる資金を持つ巨額ファンドだ。孫氏の群戦略にナンバーワンの企業を加えるには、巨額の資金が要る。たとえばUber。累計8000億円に及ぶ投資とされ、孫氏は「従来のベンチャーキャピタルでは不可能」と指摘する。巨額ファンドだからこそ、可能となった投資案件となる。

  • 巨額ファンドが可能にしたUberへの出資

群戦略において、孫氏が心がけているのが、ソフトバンク株式会社のような一部を除き、ブランドを統一しないこと、そして、一部のコア事業では過半数以上の株式を持つものの、それ以外では20-30%程度の持株比率にしているという。

SBの名を冠して、企業ブランドの統一化を図ろうと考えると、出資の際、相手から拒否され出資機会を失う可能性が高く、逆に業界3位に落ちて株式を売却したくとも売れないことが想定されるためだという。

  • ソフトバンク・ビジョン・ファンドを通じた投資は26社に

ソフトバンク・ビジョン・ファンドではすでに26社に投資。すべてユニコーンと呼ばれる非上場かつ将来有望な企業が名を連ねている。傾向としては、インターネットを活用したプラットフォームビジネスが多い。ビジネスの広がりに期待をもつことができ、いずれも大きく稼げそうな案件ばかりだ。

ソフトバンク上場の根底に群戦略

話が広がってしまったが、国内通信事業のソフトバンクの上場も群戦略が関わる。「日本の国内通信会社が上場の準備に入るのはなぜか。なぜ親子上場するのか。小さな次元でメリットを得ようというわけではなく、根底に群戦略がある」(孫氏)。つまり、群戦略を進め、300年以上も輝き続けるために、ソフトバンクは群戦略における構成要素に過ぎない。そこからすると、SBGの投資事業がさらに存在感を増し、SBGの位置づけが変わっていくものと思われる。

SBGは戦略的持株会社の位置づけであり、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどの投資事業を進めながら、事業会社の自律性を高めて株式公開を図っていく流れともなりそうだ。

この見方が正しいのであれば、買収を機に非公開化したARM事業においても、例外的な扱いにならなければ、再度、株式公開を行なう可能性があるのかもしれない。いずれにせよ、SBGの方向性を見極めるうえで、群戦略というキーワードは外せないものとなる。