セイコーエプソンが、プリンターの大容量インクタンクモデルの販売計画を再び上方修正した。1月31日に行われた2017年度第3四半期決算説明で、同社 取締役執行役員 経営管理本部長の瀬木 達明氏は、2017年度の大容量インクタンクモデルの販売台数が790万台以上になることを明らかにした。

  • セイコーエプソン 取締役執行役員 経営管理本部長 瀬木 達明氏

同社が大容量インクタンクモデルの販売計画を上方修正したのは、今年度だけで3回目。当初は730万台の計画だったが、7月にこれを740万台に上昇修正し、10月には780万台以上と上昇カーブを描いていた。四半期決算のたびの上方修正で、年度初期から60万台の上乗せとなる。プリンタ全体の出荷計画については変更せず、当初は45%以上としていた大容量インクタンクモデルの構成比が50%弱になる見込みで、2016年度実績の約40%からも大きな飛躍となる。

瀬木氏は、「グローバルのA4サイズプリンタ市場においても、市場全体の10%を超える水準となった。大容量インクタンクモデル市場に競合他社が参入したあとも、エプソンの販売台数は着実に増加している」と話す。実際、同社によれば大容量インクタンクモデル市場でシェアが約70%に達しており、圧倒的なリーダーポジションにいることが伺える。

同社はかねてからこのモデルを「収益ドライバー」と位置づけていたが、実際に同社の成長を支える製品へと育ってきた。また、これまでは新興国における販売拡大が業績の牽引役となっていたが、大容量インクタンクモデルの販売は先進国でも拡大基調に乗り、瀬木氏は「各地域で引き続き需要が強い」と語る。

お膝元の日本でも、年末商戦でテレビCMを大容量インクタンクモデルの訴求に注力。第3四半期の販売促進費は前年同期比で19億円増の96億円、広告宣伝費も8億円増の63億円を投下した。

積極的な投資成果は即座に業績にも表れており、2017年度第3四半期のプリンティングソリューションズの売上収益は前年同期比10.0%増の2116億円、事業利益は10.7%増の351億円となった。「電子部品や材料の調達価格が想定以上の上昇があったものの、増収効果や為替の影響がプラスに働き、セグメント全体では増益になった」とする。

一部マイナス要因も、新しい軸を

ただ、1から10まですべてが良いわけではない。

通常のインクカートリッジプリンターでは、欧米市場で競合プロモーションに対抗した価格調整を実施したほか、本体数量が販売未達に終わったこと、チャネルの一時的な在庫調整の影響、部品や材料の価格上昇などがあったという。そのため、プリンティングソリューションズの業績は「社内計画には達していない。また、家庭向けインクカートリッジプリンターの稼働台数が減少するなど、マイナス影響があった」と瀬木氏は話す。

また、好調な大容量インクタンクモデルについても、一部部品の調達納期が変更されたことで第4四半期へのスライドがあり、第3四半期では計画に未達だったという。」という。もちろん、「成長に向けた取り組みは着実に前進している」(瀬木氏)と、大容量インクタンクモデルを、今後の成長の柱に位置づける姿勢に変わりはない。

さらにもう一つの成長軸として同社が期待するのが2017年6月に出荷を開始した高速ラインインクジェット複合機「WorkForce Enterprise LXシリーズ」だ。