さて、プレスカンファレンスのためMSGに戻ったのが、午後6時。とっぷりと暮れた空に、グラフィック・アーティストのエリック・ヘイズ氏によるG-SHOCK 35周年記念ロゴが外壁で存在感を放ちます。MSGは創設1879年。現在の建物は1968年の竣工以来、半世紀にわたりスポーツやコンサートなど伝説的なイベントの舞台となってきました。
NYの文化的アイコンであるMSGにこの夜、集まった人、また人! カンファレンスには世界各国のリテーラーやディストリビューター、メディアが約1,500名。20時すぎからのライブパフォーマンスでは、招待を受けた一般ユーザーがさらに加わり、実に約1,800名にものぼる人々が会場を埋め尽くしました。
<シアター>という名の通り、制服姿のスタッフが随所で案内してくれるのが、レトロな劇場を思わせます。場内を見渡せば、ビシッときめたストリート系のファッショニスタ軍団から、年配の文系ジェントルマン、筋金入りのウオッチコレクターやバリバリのビジネスマン風、はたまたキュートなお嬢さん系、とまさに千差万別。バラエティ豊かなオーディエンスは、世界におけるG-SHOCK支持層の幅広さを反映するかのようです。
おや、あれは日本人プロサーファー、五十嵐カノア氏では? え! ロージー・ペレズ氏も客席に!? スパイク・リー監督の作品はじめ、映画やTVで長年活躍するプエルトリコ系の女優です。有名人には普段クールに見て見ぬ振りのニューヨーカーたちも、あたりの雰囲気を楽しみながらくつろぐ様子のロージーに、ニコニコ顔です。
6時30分を前に、早くもカンファレンスの開始です。司会を務めるのはカシオアメリカ タイムピース部門のデヴィッド・ジョンソン副社長。カシオ計算機の樫尾和宏社長のスピーチに続き、G-SHOCKの生みの親、伊部菊雄氏が満場の拍手の中、登壇します。
ゲストもそうそうたる顔ぶれです。登場順に、スノーボードのオリンピック選手ルイ・ヴィト氏や、トラベル雑誌の権威コンデナスト・トラベラー誌のメンズスタイル担当エディター、マシュー・フラネック氏。ウオッチコレクションの権威、アダム・クラニオテス氏。日本でもコアなファンを抱えるセレクトショップ
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左から、マシュー・フラネック氏(コンデナスト・トラベラー誌のメンズスタイル担当エディター)、アダム・クラニオテス氏(ウオッチコレクションの権威)、伊部菊雄氏、ルイ・ヴィト氏(スノーボードのオリンピック選手)、ロニー・ファイグ氏(セレクトショップ
のオーナー)
彼らにとって、伊部氏はまさにヒーロー。マイクに向かった伊部氏はまずアメリカへの感謝を、そしてG-SHOCK 35年の歩みを感慨深く語ります。ユーモアをはさみながらのスピーチに湧くオーディエンスも、やがて固唾を呑んで静まりかえります。そう、話は展示会場にまだ置かれていなかった「ある」モデルへ……。
伊部氏「もっとも柔らかい金属でG-SHOCKを作れないだろうか? その夢は2015年、(ケースとバンドが)純金でできたG-SHOCKの実現をもたらしました。
新たに実現した夢を、今からお目にかけましょう。
G-SHOCKを、もっとも繊細な素材で作りたいという夢。
その素材とは……クリスタル! サファイヤクリスタル製のG-SHOCKがここに完成したのです!」
伊部氏が誇らしく挙げた左腕には、光り輝くサファイヤクリスタル製のG-SHOCKが! その瞬間、ホールには歓声が広がり、興奮の渦に!
「G-SHOCKは世界一タフなブランドとして、これからも不屈の魂で常に進化を続けます」(伊部氏)と締めくくり、拍手喝采を浴びる伊部氏の姿に、若い女性出席者から思わず「He is so cool...! 」との声がもれていました。