土鍋ごはんを炊飯器で炊く

土鍋を使って炊いたごはんは格別です。電気炊飯器が数多く販売されている中で、あえて土鍋を使って炊く方も少なくありません。しかし、土鍋でごはんを炊くときは火加減の調整が必要になります。また、オール電化の家庭など、IHのキッチンでは普通の土鍋を使った炊飯ができません。

  • かまどさん電気

    「かまどさん電気」(SR-E111)。サイズは直径3cm×高さ26.1cm、重さは7.6kgです

そこで、伊賀焼窯元「長谷園」と家電メーカー「siroca (シロカ)」が共同開発したのが、本物の土鍋を使いながらも電気で炊き上がる「かまどさん電気」(SR-E111)です。

使用している土鍋は、鍋底に金属プレートが埋められたものではなく、本物の土鍋を使っています。発売日は2018年3月9日で、価格は79,800円(税別)。今までにない製品ですが、どのような性能を持つのでしょうか。

内釜は6カ月待ちの大ヒット土鍋と同じ構造

かまど炊きのごはんがおいしい理由は、強い火力や羽釜の構造などにより、熱がまんべんなく米に伝わり、ふっくらと仕上がるからです。しかしそのためには「はじめチョロチョロ、中パッパ」と言われるような火加減や時間の管理をしなければなりません。使用後もしっかり乾燥しなければならないため、お手入れの面でもひと手間が必要でした。「かまどさん電気」では、これらのデメリットが見事に解消されています。

  • かまどさん電気

    土鍋は金属鍋と比較すると、ゆるやかな熱伝導と高い蓄熱性が特徴だといいます

内釜は、2000年に発売した大ヒット土鍋「かまどさん」と同じ構造。かまどさんを開発した長谷園は、国指定の伝統的工芸品である伊賀焼の老舗窯元です。土鍋の最大の特徴は、琵琶湖の湖底に堆積してできた「古琵琶湖層」から産出した陶土を使用していること。400万年前に生息していた生物や植物の遺骸が多く含まれている地層で、高温で焼成すると遺骸の部分が燃え尽き、細かな気孔が無数にできるため「呼吸する土」と呼ばれています。遠赤外線効果にも優れており、蓄熱性も高いです。

さらに、独自の二重構造により、吹きこぼれがありません。おねば (炊飯中に出てくる粘りのある液体で、お米の旨み成分)をごはんに戻して炊くので、ごはんの甘味が増すというメリットもあります。

この「かまどさん」シリーズは、累計約80万台を販売し、現在も予約は6カ月待ちとなっているそうです。

  • かまどさん電気

    「かまどさん」は80万台を販売し、品薄状態が続いています

ただし「かまどさん電気」の内釜は電気を通して使用するため、従来の「かまどさん」とまったく同じというわけではありません。鍋底中央には、炊飯中の温度と最適な炊飯時間を測定するため、本体の温度センサーで水温検知ができる特殊加工が施されています。

土鍋を電気で使うためには、熱の伝わり方、逃し方が重要です。そのため熱源は、直火のように熱が伝わるよう、シーズヒーターを採用しています。直火で炊いたごはんと同じ仕上がりを目指しているため、1,300Wと高火力。炊飯モードのむらしの工程では、外気を取り込んでおこげができないように熱を下げるそうです。

このほか、土鍋は十分な乾燥をしないとひび割れの原因になるため、炊飯器に「乾燥モード」を搭載。お手入れも簡単になっています。

  • かまどさん電気

    シンプルでレトロなデザイン

  • かまどさん電気

    蓋は独自の二重構造です

  • かまどさん電気

    土鍋は取り外せます

白米(炊飯・おこげ)モードで1~3合の炊飯が可能で、炊き上がりは「かため」「ふつう」「やわらか」から、おこげは「こいめ」「ふつう」「うすめ」から選ぶことができます。白米3合の炊飯時間は、浸水からむらしも含めて60分。予約炊飯機能は搭載されていますが、保温機能はありません。

  • かまどさん電気

    「かまどさん電気」の特徴

冷めても美味しい、もっちりしたごはん

発表会では、炊きあがった直後と、少し冷ましたごはんを試食することができました。内蓋を開けると粒がしゃっきりと立っており、つやつやです。

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    蓋を開けるとピカーッと輝くごはん

  • かまどさん電気

    おこげモードではない白米モードでしたが、ひっくり返した底を見るとうっすらとおこげがありました

  • かまどさん電気

    和食にあうごはん。冷めても美味しく、驚きました

炊きたてのごはんは弾力があり、甘味を感じました。また、冷めたごはんもみずみずしく美味しいので驚きました。ふっくらしていて、おにぎりなどにも合いそうです。

IHヒーターは使わず、本物の土鍋で電気炊飯器を作る

開発グループの佐藤一威さんは、土鍋「かまどさん」で炊いたごはんを実現するためには、問題が山積みだったと言います。

「伝統工芸品と工業製品を合わせる難しさを痛感しました。熱の伝え方、土鍋の特性を活かす炊飯プログラムなど、どれも難題です。試作機は500個、炊いたお米は3トン以上で、開発に4年かかりました」(佐藤さん)

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    長谷園 七代目当主 会長の長谷優磁さん

長谷園 七代目当主の長谷優磁さんは、「"作り手は真の使い手であれ"の精神で、伝統を継承しつつも時代に合ったものづくりに力を注いでいます。オール電化住宅などが増えてきている今、電気でごはんが炊ける土鍋は、我々の長年の夢でした。大手家電メーカーからも、『かまどさん』を使った電気炊飯器の共同開発について誘っていただきましたが、効率ばかりを求められてしまいました。しかしsirocaさんは、IHヒーターを使うと味が落ちるから使いたくない、という要望も受け入れて開発してくれました」と、製品に込めた思いを語っています。