同じKDDI傘下だけに"すみ分け"が必要に

テレビCMで積極的にサービスをアピールしているものの、注力するポイントは大きく異なる2つのMVNO。その理由はやはり、同じKDDI傘下という点にあるといえそうだ。

そもそも同じ企業の傘下にあるMVNO同士が、同じ戦略で同じような販売施策を進めれば、互いがライバルとなってしまい、高額な販促費をグループ企業同士の奪い合いに費やす、不毛な戦いを繰り広げることとなる。それではKDDIにとってデメリットとなってしまうことから、傘下MVNOそれぞれのの強みを生かして弱みを補うことで、トータルでの契約数を拡大するべく、戦略上重視するポイントを変えているといえそうだ。

実際UQ mobileとBIGLOBEモバイルだけでなく、J:COM MOBILEもそれら2つのサービスとの明確なすみ分けを図っている。J:COM MOBILはジュピターテレコムがケーブルテレビの最大手であることを生かし、ケーブルテレビのサービスとの連携を積極的に進める一方、あえて全国展開はせず販売地域をケーブルテレビの提供エリアに絞り、販売にも顧客への訪問を主体とした、ケーブルテレビの販売網を積極活用している。

ジュピターテレコムは2015年より「J:COM MOBILE」を展開。販売地域をケーブルテレビのサービスエリア内に限定し、ケーブルテレビとの連携を強化しているのが特徴だ

UQ mobileもBIGLOBEモバイルも、過去の歴史を振り返るとそれぞれの企業が持つ特長を生かした戦略を主軸に据えていることが分かる。UQ mobileは元々KDDI傘下の別の子会社がサービスを提供していたが、2015年にUQコミュニケーションズと合併し、UQコミュニケーションズ主導のサービスになったという経緯がある。

そしてUQコミュニケーションズは元々、家電量販店などで自社の通信サービス「UQ WiMAX」に対応したWi-Fiルーターを販売していたため、既に全国での販売網を確立していた。そこでこの販売網を生かし、通常のMVNOにはリーチが難しい層にも販売を拡大するべく、セット販売を主体とした戦略を取るに至ったといえる。