シャープが「食材宅配事業」に新規参入し、料理キット宅配サービス「ヘルシオデリ」を10月19日よりスタートする。

ヘルシオデリは、同社のウォーターオーブン「ヘルシオ」の2015年以降に発売した5機種と、水なし自動調理鍋「ヘルシオホットクック」の全商品に対応した専用の料理キット。下ごしらえ済み食材や、調味料などをセットにして家庭へ届ける。ヘルシオに食材を入れてボタンを押すだけで、有名レストランのメニューを家庭で再現できるという。

シェフら協力のもと、料理キットを展開する

発売済みの機種でそのまま最適な調理が可能に

ヘルシオデリの"デリ"は、おいしい食事が届く「デリシャス」、自宅に届く「デリバリー」、惣菜のような手軽さの「デリカテッセン」という3つの意味を持たせた。シャープ IoT通信事業本部IoTクラウド事業部サービスマーケティング部 部長の松本 融氏は、「AIoT家電を生かす食材宅配ビジネス」と位置づける。

その一例がヘルシオの無線LAN機能を活用したサービス。料理キットの配送状況を音声で知らせたり、メニューを自動ダウンロードできる。松本氏は、「メニューをダウンロードしたことを知らせたり、到着予定日を知らせることで、ワクワク感を演出することにもこだわった」と話す。

共働き世帯の広がりや、生活様式が多様化する中で、「献立決めの悩み」「買い物時間や下ごしらえ時間の削減」「フードロス」といった時短、効率化ニーズが高まっている。そこに、新たな料理や流行の料理との出会い、SNSシェア、手軽さ、簡単さといったニーズの拾い上げを含めたサービス提供だという。

ぐるなびらと協力でメニュー開発

当初は、日本料理(幹東)、フランス料理(モノリス)、中華料理(中国湖南料理 華湘)、韓国料理(ソウル市場)、ベジタリアン(みんなのごはん)、カレー(AIR SPICE)の6種類14メニューを用意し、週末の団欒の時間に楽しめるものに仕上げた。メニューの価格は3800円(税別)からで、北海道と四国、九州は、送料として別途300円(税別)が必要となる。

注文は、専用ECサイトか電話で行うことができるが、将来的にはヘルシオからの直接注文も検討しているという。

料理キットは、ぐるなびとタイヘイの協業により、ぐるなびの加盟店ネットワークの中から有名シェフによるヘルシオ向けオリジナルメニューを開発した。タイヘイの食材調達や加工ノウハウを活用して、ヘルシオに適した分量で、最適のカット方法と下ごしらえを実現した。

「日本の食は世界から熱い視線が注がれており、多様な食文化、そして新たな食文化も生まれている。しかし、それを育む外食産業の環境が良いとは決して言えない。ぐるなびはそれを支えていければと考えており、イートインだけではない、ケータリングなどによる中食を活かすことも考える必要がある。今回の事例は先進的な取り組みの一つであり、手軽においしい料理を楽しめるニーズは確実に増えていくはず。これが更なる新たな食文化を作ることにつながると期待したい」(ぐるなび 代表取締役社長 久保 征一郎氏)

2年前の定款変更が一つの布石に

シャープは6月に開催された定時株主総会において、定款の一部変更を決議。「食品の販売等およびは金融商品取引」を加えた。同社副社長の野村 勝明氏は、「食品の販売を追加したのは、AIoTが進化するなかで、冷蔵庫のなかに何があり、何が切れているのか、今ある食材から何が作れるのかといったサービスを提供ができるようになる。その際に、食材などを補充するといった事業ができると考えている」と発言していた。

ちなみに2015年の株主総会でも定款の一部変更を決議しており、ここでは「電気の小売り事業」や「農産物の生産及び販売」「化学製品の製造及び販売」を含めている。中でも「農産物の生産及び販売」はシャープの本業とは大きくかけ離れたものだが、同年11月から「ヘルシオお茶プレッソ」向けの専用茶葉として、京都府宇治産地の一番茶を使用した「ヘルシオお茶プレッソで飲む抹茶」を発売した経緯がある。

それまでにも、販促品や斡旋品では食品を用意したことがあったが、正式に食品を販売したのは、このときが初めてだ。ヒット商品の「ヘルシオお茶プレッソ」をより楽しんでもらうための高級茶葉として用意したもので、これを独立したビジネスにするという狙いはなかったともいえる。

だが、今回の「食材宅配事業」への参入は、狙いも規模もまったく異なるものだ。