それでは同様のサービスが、もっと庶民的な店にも適用できるかというと、これは単純な問題ではない。サービスの規模が大きくなれば、バックボーンとなるシステムも大規模なものが必要になり、開発・維持のコストも大きくなる。ダイナースクラブの場合、会員向けサービスということで採算性をある程度度外視している面も大きいし、バックボーンである「ポケットコンシェルジュ」は全部で500店前後、高級店中心というニッチ市場に絞り込むことで採算性を出している面があるが、これが仮に5万店になれば、店側に求める負担も大きくなる。また決済手段としてクレジットカードを選ぶと、中小の飲食店ではカードの手数料も負担になってしまう。するとキャンセル枠を売っても採算に見合わなくなる、という負のスパイラルも考えうるわけだ。

また、配信システムであるLINEについても、個人向けにカスタマイズしたメッセージを送るにはLINEビジネスコネクトの利用が必要であり、これはLINE公式アカウントでなければ利用できない。LINEビジネスコネクトの利用料は月額250万円~と、大企業向けの設定で、個人経営の飲食店などが気軽に利用できるものではない。

こうして考えると、キャンセル問題を広く一般の飲食店向けにも解決する手段というのはなかなか難しいように思えてくる。既存のグルメサイトなどがそのネットワークを活用して参入してくるというのが一番あり得るシナリオのように思えるが、四方うまく納めてくれるサービスは登場するのだろうか。筆者の予想を覆すような画期的サービスが現れてくれることを期待したい。