狙うはお茶の間のアシスタントではなく、パートナー

最後に、LINEの人工知能、音声アシスタントデバイスへの取り組みが、アマゾンやグーグルが持つ「ホーム」という文脈を語らない点に注目しよう。

アマゾンもグーグルも、スマートホームの中核をなすデバイスとして紹介されているが、その成果は前述の通り、盛り上がりを見せられずにいる。LINEのデバイスもスマートホーム連係機能を提供するとしているが、それを核に据えない点が賢いと思う。

日本の住宅事情、とくに都市での生活を考えてみると、スマートホームデバイスが入り込む余地が小さいことがよく分かる。また若者が、住まいに対して大きく投資することも考えにくいのだ。

これに対して、LINEは、Clover発表のタイミングで、ウィンクルを買収した点で、1人1台を目指していく戦略を目指すと見ることができる。ウィンクルは、好きなキャラクターと暮らすことができるバーチャルロボットデバイス「Gatebox」を開発するスタートアップ企業だ。

WAVEも含む音声アシスタントデバイスが、筒状のスピーカーデバイスであるのに対し、Gateboxは、部屋の中にキャラクターが「存在」し、会話を楽しんだり、他のデバイスのようにスマートホーム連携を指示することができる。公式ウェブサイトでは『一緒に暮らせる』という言葉を使っている。

Gatebox

Gateboxが、LINEの人工知能デバイスのフラッグシップとなるならば、WAVEやFACEが、より人なつっこく、一緒に暮らす感覚を楽しむ方向性を目指すことになるだろう。

例えば、ペットのようにかわいがる側面を持ち、人工知能と暮らす体験を作り出す。そうした「体験」は、現在のAmazon EchoやGoogle Homeに求める「賢さ」とは異なる価値が備わり、存在自体がキラーアプリとなるはずだ。

懸念としては、擬人化も一巡し終わったような、非常にハイコンテクストな感覚が、日本人以外に理解されるかどうかだ。なんらかのハリウッド映画のモチーフや、人気のあるアニメの文脈を活用しながら伝えていくことも必要だ。こうした感覚や体験が世界に広まることこそが、クールジャパンと言えるのではないだろうか。