そうしたSIMの複雑な仕様が影響していると見られるのが、現在ソフトバンクと日本通信の間に起きているトラブルである。日本通信はソフトバンクに携帯電話網の相互接続を申し入れ、MVNOとしてソフトバンク回線を用いたサービスを提供しようとしていたのだが、日本通信は9月29日、ソフトバンクに接続を拒否されたため、接続協定に関する命令申立書を総務省に提出したと発表している。

そのリリース文を読むと、「ソフトバンクは現在、3,938万回線を保有し、市場全体のスマートフォン比率(主にiPhone)は約70%程度なので推定約2,730万回線が新たに格安SIMを利用できるようになるということです」との記述がある。ここからはあくまで推測だが、日本通信側はNTTドコモのように、1枚のSIMで幅広い端末で利用できるサービスの提供を考えていたと見られるが、ソフトバンク側はSIMの仕様が複雑であるため、そうした形でのサービス提供が難しいとしたことから、交渉で溝が生じトラブルへとつながったものと考えることができそうだ。

この他にもNTTドコモ以外のキャリアは、MVNOのSIMを利用する上でさまざまな制約を設けている。そうした制約の多さが、MVNOがNTTドコモ以外のネットワークを選ばない、大きな要因の1つとなっているのである。

IIJのユーザーイベント「IIJmio meeting13」より。au回線を用いた通信サービス「タイプA」を提供する同社だが、使い勝手の問題からNTTドコモ回線を用いた「タイプD」の利用を推奨している

それゆえauやソフトバンクのネットワークを利用するMVNOを増やすには、単に接続料を下げるだけでなく、両者が抱える制約を少しでも減らす取り組みが必要になってくるだろう。「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」ではそうした両者の制約に関する議論もなされているようだが、キャリアのネットワークが抱える問題に起因する部分も多いことから、解決には時間がかかるといえそうだ。