接続料の差を生み出している「β」の算定方法

では今回、何が問題視されているのかというと、接続料が最も安いNTTドコモと、最も高いソフトバンクとの間で約1.5倍もの料金差があることである。MVNOは熾烈な価格競争を繰り広げていることから、できる限り接続料が安いキャリアから回線を借りる傾向にある。それゆえ現在、自由度の高い「レイヤー2接続」で回線を借りているMVNOは、大半がNTTドコモの回線を選択しているのだ。

一方で、KDDIの回線を選んでいるのはUQコミュニケーションズやケイ・オプティコム、インターネットイニシアティブ(IIJ)など少数、ソフトバンクの回線を選んでいるのは飛騨高山ケーブルネットワークなど、一層少数のMVNOに限られている。キャリアによってこれだけ大きな差が生まれているのには、接続料の差が大きく影響していることから、総務省は接続料の格差を縮めるべく議論を進めているわけだ。

フォローアップ会合と並行して進められている「モバイル接続料の自己資本利益率の算定に関するワーキングチーム」での議論によると、接続料に大きな差が生まれている理由は、接続料を算出する際に必要な、自己資本利益率を計算するのに用いられる「β」という値が影響しているとのこと。このβの計算方法は各キャリアによって異なっており、その違いが接続料の大きな差としてあらわれてきているようだ。

「モバイル接続料の自己資本利益率の算定に関するワーキングチーム」では、フォローアップ会合と並行して接続料に関する議論が進められている

NTTドコモは自社の株価などを、NTTドコモが上場した1998年から計測して算出。KDDIもNTTドコモの株価などを、同じ期間、自社の財務リスクを取り入れる形で算出している。だがソフトバンクは、持ち株会社であるソフトバンクグループの株価などを、同社が携帯電話事業への参入を表明した2004年から計測して算出している。

各社共に異なる算出方法を用いているのには、KDDIやソフトバンクは固定通信事業やコンテンツ・サービス事業を展開するなど、純粋に携帯電話事業のみを展開する企業が存在しないことが大きく影響しているようだ。NTTドコモが最も携帯電話専業に近い事業者といえるが、同社も最近では生活系サービスに力を入れているため、純粋な携帯電話事業者というわけではない。

3社のβの算定方法。NTTドコモは自社、KDDIはNTTドコモの株価などを基に算出しているが、ソフトバンクはソフトバンクグループの株価を基に算出している