ルネサス エレクトロニクスは、USB Power Delivery 3.0に対応した電源IC「RAA230161」のサンプル出荷を開始する。コントローラICと組み合わせたリファレンスボードも順次提供し、USB Power Delivery対応機器を開発、評価する期間の大幅な短縮が期待される。サンプル価格(税別)は1,000円/個で、2016年9月から月産50万個で量産を開始する予定だ。

電源IC「RAA230161」のイメージ

USB Power Delivery(以下、USB PD)を簡単にいうと、USBケーブルで最大100Wの電力供給を行う規格。この範囲内ならば、たとえば液晶ディスプレイから小型PCに電力を供給したり、PCから液晶ディスプレイへと給電したりできる。PCや周辺機器、スマートフォン、タブレット、デジタルカメラなど、身の回りにある多くのデバイスは、最大100Wの電力で十分まかなえるのだ。データのやりとりと電源を1本のUSBケーブルで実現できるため、電源ケーブルが不要になるという大きなメリットがある。

今回、ルネサス エレクトロニクスがサンプル出荷を開始する電源IC「RAA230161」は、出力電圧として5V、9V、12V、15V、20V、最大出力電流として3Aに対応(入力電圧は24V)。従来のUSB給電は5V/0.5Aや5V/0.9A、5V/1.5Aだったが、これらに加えて多くの機器が用いる12V出力の給電も可能だ。また、15W(5V/3A)、27W(9V/3A)、45W(15V/3A)、60W(20V/3A)、100W(20V/5A)といったパワールールもサポートしている。

電源IC「RAA230161」は、DC/DCコンバータ部において最大95%という高い効率を実現(従来は最大93%)。扱う電力量が増えることで問題になる発熱をおさえ、パッケージにはヒートシンク付きの20ピンHTSSOPを採用した。出力電流値をモニタして過電流にならない仕組みや、出力過電圧保護、過電流保護、過熱保護、短絡保護といった各種の保護機能も備える。

また、電源IC「RAA230161」を制御するUSB PD 3.0対応コントローラIC「R9A02G011」を搭載した、各種リファレンスボードを提供。顧客企業が持つ既存の機器をすぐに、USB PD対応の給電機器として評価できる。ルネサス エレクトロニクスは「高い安全性の実現と同時に、一例として、従来は6カ月以上を要していたセット開発に対して、USB PD機能を追加したセットの設計開発期間を3カ月で実現可能」と述べている。