2015年、アップルは例年以上に数多くの製品について、大幅なリニューアルを行っている。Apple TVは、販売規模こそiPhoneやMacBookに比べると小さいだろうが、その「変化の幅」という点では他の製品よりずば抜けて大きい。

Apple TV 2015年モデルは、この金曜(10月30日)から本格的に販売が開始され、多くの人が手に取れるようになっているはずだ。実質的にビジネスの再始動となったApple TVの実機から、アップルの狙いを読み解いてみよう。

若干太ったが、基本デザインは継続

ボディを見ても、Apple TVの変化はあまり見えてこないだろう。旧モデルを知る人の目から見ると、厚みがかなり増えて重くなった、要は「太った」ように見えるが、家電としては依然コンパクトなものであり、テレビの近くで存在感を発揮しない、という美点は変わらない。

Apple TV・2015年モデル。ちょっと分厚くなったが、フットプリントなどに変化はない

もう一つ、伝統が守られているのが「電源を外付けにしない」ことだ。コンパクトなデジタルガジェットは、省スペース化と国際対応の容易さを理由に外付けのACアダプタを使うことが多い。だが、それは結果的にコンセント周りをごちゃつかせる原因になるし、そもそも美しくない。Apple TVの良いところは、とにかく接続がシンプルなことだ。HDMIと電源さえつなげばいい。有線でネットワークにつなぐならイーサネットも接続するが、無線接続ならもちろん不要。他の機器以上にシンプルであるのはやはりありがたい。

Apple TV背面。端子は必要最低限のもので、シンプル。過去モデルと違い、光出力端子はなくなった

なお、過去モデルにはあったS/PDIFの光デジタル音声端子はなくなっている。HDMI対応機器が少ない時代には、映像と音声を分けて別の機器と接続するために必要だったものだが、アップル的にはすでに使命を終えた、と考えているのだろう。そうした選択をする企業は多く、妥当な選択と思える。

デザインも含め、大きく変わったのがリモコンだ。タッチパッドを備え、接続をBluetoothにした「Siri Remote」に変わった。機能的な面は後ほど詳しく述べるが、過去の「十字キー + 決定」、という使い方からタッチパッドになって、操作性は格段に向上したと感じる。Bluetoothになって電力消費が大きくなったためか、電源はボタン電池から充電式のバッテリーに変わった。充電には、iPhoneで使っているLightiningケーブルを使う。アップルは一度の満充電で3カ月動作するとしている。短いようだが、テレビを見ている時に数分でもつないでおけば、それで最低数時間は使えるので、実用上はさほど問題はない。むしろ、ボタン電池の型番を控えて買いに行くよりは、ずっと手間が小さい。

新しいリモコンとなる「Siri Remote」。ボタンからタッチパッドでの操作に変わった。音量調整とSiri用のボタンが増えているのに注目

Siri Remoteの底面にあるLightning端子。これでリモコンの充電を行う