日本科学未来館が2015年3月に開始した企画展「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」が、好評のため当初の2015年3月1日から、2015年5月10日まで展示期間を延長している。来場者数は4月16日時点で約37万人と盛況だ。

「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」のメイン展示で新作となる「Floating Flower Garden - 花と我と同根、庭と我と一体と」。部屋いっぱいの蘭が自分を包み込む、不思議な空間となっている

「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」は、デジタル技術を利用することで表現できるアート作品を通じ、体験型の知育空間を楽しめる企画展。企画展は「踊る! アート展」と「学ぶ! 未来の遊園地」の2種類にわかれ、前者ではデジタルにおける表現の追求、後者では他者と共同で何かを創造する「共創」の体験がコンセプトだ。

このたび、「学ぶ! 未来の遊園地」に日本マイクロソフトのタブレット「Surface Pro 3」を活用した展示などが加わり、記者向けに展示内容を改めて紹介するプレスツアーが行われた。

企画展の入口に立つ、チームラボのブランドディレクター、工藤岳氏。複雑で精緻な映像展示が行われている本企画展だが、使われているPCはコンシューマ向けのもの。市販PCではスペック不足だったため、チームラボが自作したという。コンテンツ表示用に20台、センサー用に20台、「天才ケンケンパ」で使われる「Surface Pro 3」が4台。コンシューマPCはパフォーマンスやコスト面で優位性が高く、コンテンツが制作しやすいとのことだ

踊る! アート展

「踊る! アート展」では、蘭の生花を使った新作のメイン展示「Floating Flower Garden - 花と我と同根、庭と我と一体と」など9つの作品を展示。いずれも花や草木、動物などが登場し、観客自身が作品を五感で体験できる展示だ。

展示「Floating Flower Garden - 花と我と同根、庭と我と一体」。
2,300本以上の蘭の花を天井から吊るし、人がいる場所ではゆっくりと花が上がり、人がいない場所では花が下りていく。あたかも自分を中心に花の空間が生成される感覚で、他に人がいた場合は、空間がつながり大きな花の空間ができあがる。自分床面に6個のセンサーを配置し、人のいる場所を感知。自分の歩みにしたがって、数秒ほどかけて花が次々と上昇していき、おとぎ話の主人公になったような感覚を楽しめる。部屋自体は広くなく、1度に多くの人が入ってしまうと全ての花が上がってしまうため、展示の体験は1度に3人ほど。70人待ちにもなる人気の展示という

さまざまな種類の蘭は、ミストで育成。朝昼晩と時間により、さまざまな蘭の香りも楽しめる

展示「花と人、コントロールできないけれども共に生きる、そして永久に - Tokyo」。
東京に生息している花々が、プログラムによってリアルタイムで描かれ続ける。床をわずかに波状にすることで人の位置を特定し、人がいる場所に花が咲いていくほか、花が咲いている場所を人が踏むと花が散っていく。描かれる花々は5分で1カ月、1時間で1年間が経過し、東京の花々の1年の移ろいが楽しめる。真っ暗な部屋に色鮮やかな花々だけが浮かんで見える、幻想的な空間だ

展示「生命は生命の力で生きている」。
空間に書を描き、書の墨跡が持つや速さ、力強さをデジタルで立体的に再現する試み。木をイメージした書の上に、冬から初夏にかけての季節の移り変わりが、4Kディスプレイ上で鮮やかに表現される。展示「冷たい生命」はこの3次元構造を、網目状の線で記述している

展示「増殖する生命 - Gold」。
記録された映像の再生ではなく、4Kデータのプログラムをリアルタイムで描画し続け、ひたすら花々が生まれ散っていく移ろいを繰り返し続ける展示。2度と同じ全体像が描かれることはない。4Kディスプレイによる精細な映像が印象的

展示「花と屍 剝落 十二幅対」。
4Kデータで描かれた絵物語の表面を、1分50秒かけて剥落させる演出で、最終的に網目状の線で描かれた裏側の3D構造を表示させる。12枚のディスプレイそれぞれに12編の絵が描かれる展示は圧巻

展示「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」。
大画面のディスプレイの上部から降りてきた漢字をタッチすると、その漢字が実際のイラストに変容する。例えば、「木」の文字をタッチすると大木が生え、「鳥」の文字をタッチすると小鳥が空を舞う。描かれたコンテンツは互いに連動し、生まれた鳥が生えてきた大木の枝にとまる、といった演出も。タッチすることで生まれるコンテンツのビジュアルや、また、既に描かれたコンテンツとどう連動するかが面白く、思わずタッチしてしまう

展示「世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う」。
ディスプレイが8枚並び、縦5m、横20mにも及ぶ8K解像度のなかにさまざまな動植物が描かれる。動物にタッチするとその部分が崩れていく。遠くから見ると1つの色に見えるが、近くでは複数の色が集合している、カラフルな展示。壁一面に広がる展示の大きさと、色の鮮やかさ、そして動物に触ろうとすると崩れるもどかしさも面白い

展示「追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点 ‒ Light in Dark」。
光の八咫烏(やたがらす)が宙を舞い、立体的な文字を描いていく。手前に草、中央に池、奥に富士があるような襖絵の世界感を、デジタルで実際の空間に再現。大型スクリーンを手前から奥へ3レイヤーへ重ね、右・左・中央どこから見ても奥行のある立体的な映像を体験できる