55EG9600は、本年1月に米・ラスベガスで開催された家電製品展示会「2015 International CES」で同社が参考展示していたものと同じ製品だ。発表会ではその特徴を大きく4つに分け、わかりやすく説明していた。その4つとは、「Perfect Black」「Perfect Color」「Perfect Curve」「Art Style Design」だ。

Perfect Blackは、前述の通り有機ELの特徴を活かしてくっきりとした深い黒が表現できること。

Perfect Colorは色再現性の高さを指す。従来の有機ELのRGBの画素に加えて、白(W)のサブピクセルを追加した同社独自のWRGB方式を採用しており、繊細で鮮やかな色表現を実現している。

Perfect Curveは、カーブしたディスプレイ面による没入感の高さ。画面が大型化すると画面中央と周辺部に視野角差が生じてしまう。これを映画館の大型スクリーンのように画面を湾曲させることで、視野角差を軽減するわけだ。

Art Style Designは、パネル最薄部で0.6cmというスリムなデザインのこと。有機ELテレビにはバックライトが存在しないため、その分だけ薄型化と軽量化が図れる。同社ではリビング等に設置したとき、まるで浮いているように見える存在感だとアピールしている。

「55EG9600」の特徴「Perfect Black」。バックライトを使用しない自発光により、100万対1を超えるコントラスト比を達成

「Perfect Color」。白(W)を加えた独自のWRGB方式により、従来のテレビでは再現できなかった色域までカバー

「Perfect Curve」。画面の大型化による画面中央と周辺部の間の視野角差を低減する曲面ディスプレイ

「Art Style Design」。パネル最薄部0.6cmのスリムな本体により、室内に浮かんでいるようなデザイン

この4つ以外で目についた特徴としては、有機ELだからこそ実現できた0.0001ミリ秒以下という反応速度の高さ(液晶の1,000倍以上であるという)や、オーディオ機器メーカーのHarman/Kardonと提携して開発したサウンドシステム、操作性を向上したテレビ用OS「webOS 2.0」の採用などが挙げられる。

「webOS 2.0」により、便利機能をスムーズに呼び出せる操作性と、視聴を邪魔しないユーザーインタフェースを実現

webOS 2.0の機能の1つ「お気に入りチャンネル」。よく見るチャンネルをランチャー上に登録し、リモコンからワンクリックで呼び出せる

国内テレビ市場は、地デジ完全移行や消費税増税前の駆け込みで活況だった時期に比べると、かなり盛り上がりに欠ける状況だが、LGが今を選んで虎の子の有機ELテレビを国内市場に投入する理由は何だろうか。

LGエレクトロニクスの李専務は、大型テレビの買い替えタイミングが近づいていることや、東京オリンピックに向けた盛り上がりへの期待感はもちろんだが、パネルの歩留まりが向上し、安定供給のめどが立ったことが大きいと言う。「ずっと日本市場に展開したかったが、やっと自信を持ってお届けできる製品が作れた」と李専務。

日本市場は消費者の目が肥えており、海外メーカーの参入は難しいとよく言われるが、品質に厳しい日本市場だからこそ、他社にない有機ELテレビに魅力を感じてもらえるという読みのようだ。

ぱっと見ただけでわかる黒の表現力

発表会場の製品展示コーナーでは、55V型の55EG9600のほか、65V型の65EG9600や、液晶テレビのEC9310シリーズなども展示していた。

有機ELテレビの55EG9600を従来の液晶テレビと並べて比較展示したコーナーでは、55EG9600の黒の深みの違いがぱっと見ただけですぐにわかった。また、サンプル映像は動きの速い映像が多く用意され、応答速度の性能もアピールしていた。実際に曲面パネルを見てみると、思ったほど違和感は覚えない。斜めから見るとカーブが目立つが、正面から見ているとだんだん歪みが気にならなくなり、むしろ画面の中心が見やすくなって目の負担が減っているように感じた。

同社によれば、まずは都市部の大型量販店から実機を展示していくという。有機ELと曲面ディスプレイが気になる人は店頭で実際に視聴してみるとよいだろう。