8月5日、公益財団法人日本宇宙少年団(以下、YAC)と毎日小学生新聞が主催するイベント『銀河教室inつくば2014』初日の講座が、Apple Store銀座にて開催された。このイベントは、毎日小学生新聞の連載「銀河教室」の体験版イベントとして毎年夏休みに開催されているもので、今年で4回目。小学4年生~中学3年生を対象に、全国から40名の子どもたちが集まった。

今年は二泊三日の日程で筑波の宇宙開発センターを訪ね、特別講義の受講や実際の宇宙飛行士訓練施設での模擬訓練を体験することがイベントの目玉だ。また今回は初の試みとして、Apple Store銀座とのコラボレーションにより、子どもたちにiPadを貸し出し、イベント全般を通して活用されることになっている。イベント初日、iPadのレクチャーと東京スカイツリー見学の様子を取材した。

1時間半でiPadの基本とiMovieのレクチャー

昼過ぎにApple Store銀座のシアターに集まった子どもたち。8人ごとの班に分けられ、班のリーダーとしてYACから引率の大人がつく。iPadは各班に2台ずつ貸し出されるため、使う際には4人で共有するかたちだ。

iPadは主に記録映像・写真の撮影と編集、そしてイベント3日目にそれを発表することに使われる。シアターではAppleのスタッフが講師となり、その作業を行うためのレクチャーが行われた。

Apple Store銀座のシアターで、iPadの使い方をレクチャー

子どもたちは4人で1台のiPadを共有

まずはiPadの基本操作とカメラの使い方から。説明は要点だけに絞られ、分からないことがあればiBooksに保存されたマニュアルを参照するよう説明されるが、iPadに触れたことのある子どもも多く、全く困った様子はない。

続いて、店内各所で実際に撮影をしてみる。記録映像を目的とするため、「どこで」「誰が」といった要素が伝わるモノを選ぶといった、撮影のポイントもアドバイスされた。

店頭や店内で、「Apple Store銀座」と「イベントに参加する自分たち」を伝える映像や写真を撮影

シアターに戻ってくると、今度はiMovieを使ってムービー編集を行う。プロジェクトを新規作成し、写真やビデオを挿入。と思ったら、あっという間に並べ替え、トリミング、タイトルの入れ方と説明はどんどん進む。クリップの音調整、トランジション、BGMといった応用的な機能まで紹介され、最後は720pで書き出してカメラロールに保存するところまで、こんなに詰め込んで大丈夫だろうかと心配になる。

ちょっとびっくりするような速さで説明が進む

だが、さらに続きがあった。キャンプ中には場所を変えながら多数のイベントが用意されている。それぞれの記録映像を録って、短時間で一本のムービーにまとめるのは難しい。そこで、イベントごとに数十秒程度の短いムービーを作って書き出し、それを取り込んで一本にまとめると良いだろう、と説明された。

ツールの使用法にとどまらず、編集の考え方まで課題にするというのだ。この編集において、班の中で撮影した素材をシェアする際の手段として、AirDropの使い方も紹介された。

AirDropは子どもたちも気に入ったらしく、さっそく講師のiPadに写真を送るいたずらも発生

iMovieの使い方レクチャーは一時間もかけずに終了。ずいぶん駆け足に感じられたが、ストアのスタッフによると子どもたちにはこれで大丈夫なのだという。「説明を聞いて理屈で納得するよりも先に、どんどん触ることで覚えてしまう。また、iPadやアプリがそれに合ったようにできている」とのことだ。先に頭で理解しようとする大人とは、入口がまるで違うのだ。

バスで東京スカイツリーへ移動

到着するとさっそく場所が分かる看板を撮影し始める

iPadを携えた東京スカイツリー見学

Apple Storeでのレクチャーが終わると、一行は東京スカイツリーへ移動。ソラマチタウンにある千葉工業大学の見学施設を訪ねた後、スカイツリーの展望デッキへ登る。ただ登るだけではなく、実験や観測といったミッションをこなしながら記録映像の撮影も行うという、マルチタスクな行程となっている。

千葉工業大学の見学施設では、宇宙の歴史を学ぶ3D映画を視聴

展示エリアには、同校が開発したロボットや月・火星の資料映像などが

太陽系惑星の運行シミュレータなど、宇宙関連の展示がやはり人気

一方、VF-25開発計画に興味を持ったのは主に引率の大人たち

いよいよスカイツリーの展望デッキへ。エレベーターではアプリを使った加速度の計測というミッションがある。iPadで加速度計測アプリ「SenSensor」を起動し、手の動きが加わらないよう壁に押し当て、上昇開始。

スカイツリー展望デッキ見学に課せられたミッション

混雑したエレベーターの中で、アプリのグラフをのぞき込む

実際の計測グラフ。高速エレベーターだが乗り心地を追求した性能によりあまりGは感じられない

展望デッキへ到着すると、今度は外を眺めに。展望デッキの高さ350mは、国際宇宙ステーションの高さの約1/1000にあたる。この縮尺で地上を見下ろすと、おおよそ雷門から江戸東京博物館までの距離が国際宇宙ステーションから見た日本列島の大きさになるそうだ。

ミッションのランドマーク探しや、記録映像の撮影をする

カメラロールにはすでに100点以上の写真や動画が

数人で囲んでアレコレ言い合いながら動画編集にトライ

見学を終えると集合場所ではさっそくムービーの編集を行う班が。先の説明でよく分かったかと尋ねてみると、返事はなんとなく曖昧だが、手元は試行錯誤しながらちゃんと動いている。数人で共有していることも、良い効果になっているようだ。また、お互いを撮り合ったり、出演者と撮影担当の役割分担をしたりと、目的が明確なだけにグループ内での運用を考えて使っている様子も見られた。

この日は雲の向こうにうっすらと富士山が見える天気

移動しながら動画を編集する様子も

今回のイベントで、単に技術的に便利なツールとして使うだけでなく、囲んで見られるiPadだからこそ可能なコミュニケーションが発生するという、PCやiPhoneにない良さが効果的に活きている印象を受けた。ただし、画面に集中するあまり前を見ていなかったり、移動の列に遅れたりすることもあるので、そのあたりは大人のフォローが必要だ。

一行はこの後バスで筑波に向かい、翌日はJAXAでの特別講義や展示施設見学、宇宙飛行士訓練施設体験等に臨む。3日間を通して10台のiPadにはどんな映像が記録されるのだろうか。そして映像とともに、そこに映らなかった数多くの出来事も彼らの記憶に長く鮮明に残ることになるだろう。

盛りだくさんのイベントをこなす子どもたち。よい夏を!