【上】フルセグとワンセグとの自動切り替えの設定が可能 【下】極洋電機 営業部船用・プラント機器営業グループの宮本将樹課長

KST-1000-Jでは、家庭用テレビには搭載されていないワンセグチューナーを搭載。これにより視聴可能エリアを大幅に拡大。フルセグでは電波が弱くて受信できなかったエリアでも視聴可能とした。「ワンセグの画質でも、従来のアナログ放送よりも鮮明に表示できる」(極洋電機 営業部船用・プラント機器営業グループの宮本将樹課長)という点でも、ワンセグへの評価は高い。中継局からの距離や、天候などの状況にも左右されるが、沿岸から約30kmの海域を航行している場合には地デジ放送(ワンセグ)の視聴が可能だという。

さらに、独自開発した「ワンプッシュスキャン機能」により、リモコンの「SCAN」ボタンだけで視聴可能な放送局を自動的に選択。さらに、2つのチューナーを搭載しており、そのうち、ひとつのチューナーが常に信号受信レベルを検知。最も強い電波を発信している中継局へと自動的に切り替える「中継局・系列局サーチ機能」により、安定した画質での視聴を実現しているのも特徴だ。ここではフルセグからワンセグへの切り替えも自動的に行われる。

「カーナビでは複数のアンテナを使って中継局をサーチするが、KST-1000-Jでは、ひとつのアンテナだけでサーチできるのが特徴。どの受信レベルで切り替わるのが最適かといったことを何度もシミュレーションした。ここに当社ならではのノウハウがある」(極洋電機・神谷研史社長)と、その機能に自信をみせる。

極洋電機・神谷研史社長

付属したリモコンの「SCAN」ボタンで中継局を検索

受信レベルを測定して自動的に切り替える

大がかりな工事が不要で導入のハードルが低い

また、導入済みのテレビ、アンテナに接続するだけであり、大がかりな工事が不要である点も、船主には大きなメリットとなる。

KST-1000-Jのインタフェース部。既設のアンテナとテレビに接続するだけで済む

「BS放送を受信できれば、地デジはいらないという声もあるが、新たにアンテナを敷設するのに数100万円かかること、BSでは再放送や通販番組が多く、地デジほど番組数が豊富ではないといったことあり、船員からは地デジを手軽に見たいという要望が強い。KST-1000-Jでは、約4万円で地デジの視聴環境を快適にすることができる」(神谷専務取締役)という。

KST-1000-Jは、2014年5月21日から販売を開始。日本近海を航行する内航船やフェリーなどへの導入商談が進んでいるという。年間出荷目標は2,000台。「地デジ化による船舶での視聴環境の課題は、世界的に見受けられる。日本たけでなく、海外向けの展開も考えていきたい」と、神谷専務取締役は語る。

同社では今後、KST-1000-Jのような自社開発製品のラインアップ強化を図る考えであり、「船主、船員の要望を聞き、課題を解決できる製品づくりに取り組む」としている。地デジ化における課題解決への取り組みが、同社の新たなモノづくりの指針を決めたようだ。