構造改革も赤字脱却ならず……テレビ事業10年連続赤字か? ソニー

ソニーは、イメージング・プロダクツ&ソリューション事業の第3四半期の売上高が、前年同期比6%増の1,981億円、営業利益は150億円増の121億円となった。液晶テレビの販売台数は第3四半期実績で450万台。第1四半期は310万台(前年同期は360万台)、第2四半期は330万台(同350万台)と前年実績を下回っていたが、第3四半期では前年同期の420万台を突破。第4四半期は310万台の出荷を見込み、前年同期の220万台を大幅に超えて、年間1,400万台の計画を達成する考えだ。これは前年度実績の1,350万台を上回る計画だ。

決算説明会でテレビ事業の収益改善策について説明するソニーの平井一夫社長

だが、ソニーのテレビ事業は、2013年度も赤字脱却にはならない見通しだ。これにより10年連続での赤字となる。ソニーでは、テレビ事業の分社化を図ることで、経営の意思決定の迅速化を図るほか、4Kテレビの強みを生かした付加価値路線を推進する計画だ。ソニーの平井一夫社長は「テレビ事業の再生への道筋は見えている。テレビ事業は正しい方向に向かっている」として、今後、分社化した体制のなかで、テレビ事業再生の総仕上げに臨む考えだ。

「一本足経営」の一本足・液晶テレビが単価上昇で好調 - シャープ

シャープの高橋興三社長

シャープの2013年度第3四半期の部門別業績は、デジタル情報家電の売上高が7.2%増の2,169億円、営業利益が59.4%増の84億円となった。そのうち、液晶テレビの販売金額は13.0%増の1,188億円、販売台数は前年同期比2.3%減の218万台となった。

同社のテレビ事業は第3四半期累計では黒字となっている。高橋興三社長は「液晶テレビは台数、金額ともに伸張した。国内市場における底打ち感があるほか、欧米、中国でも販売台数を伸ばすことができた。新興国などの重点地域における販売拡大が貢献している」としたほか、「4K対応AQUOSや、クアトロンプロなどの高精細液晶テレビの拡大、60型以上のモデルのラインアップ拡充が貢献。4Kテレビとクアトロンプロにより、単価の上昇が図れている」とした。これにより、同社では、液晶テレビの販売金額の通期売上高見通しを200億円増の4,200億円へと上方修正した。

累計では赤字も第3四半期単独では黒字転換 - 東芝のライフスタイル事業

テレビ、パソコン、家庭電器をライフスタイル事業として統合した東芝

最後は東芝だ。同社はテレビ、パソコン、家庭電器を「ライフスタイル事業」として統合していたが、同セグメントの売上高は、第3四半期までの累計で前年同期比2%増の9,682億円、営業損益は125億円悪化のマイナス414億円の赤字(営業損失)となった。東芝代表執行役副社長・久保誠氏は「反省しなくてはならない数字」としながらも、「第1四半期は257億円の赤字、第2四半期は110億円の赤字、第3四半期は47億円の赤字と減少している。第3四半期はパソコンの赤字が残った」とし、赤字幅が減少していることを強調した。

そのうち液晶テレビは、売上高が前年同期比10%減の1,822億円と、事業セグメント全体よりは落ち込みが激しかったものの、第3四半期単独では黒字を達成したという。だが、久保副社長は、「黒字化といっても自慢できる数字ではない」とし、黒字幅はわずかであることを匂わせた。

こうしてみると、テレビ事業においては、各社ともわずかながらではありながら、回復基調に転じはじめているのがわかる。シャープ、東芝の黒字転換はその証であるし、パナソニック、ソニーも着実にテレビ事業の赤字幅を縮小させている。

しかし、まだトンネルを抜け出せる状況にないのは確かだ。各社に共通しているのは、来年にかけて、テレビ事業回復の総仕上げに挑もうという姿勢だ。その準備がこの第4四半期に整うのかどうかが、テレビ事業における短期的な注目点であり、その後の成長戦略が中長期的な注目点になるといえよう。

本稿において当初、シャープの高橋興三社長の顔写真として奥田隆司会長のものを誤って掲載しておりました。ご迷惑をお掛けした読者の皆さまならびに関係各位にお詫びして訂正いたします。