Windows 7版IE 11の内部的な改良点としては、「WebGLのサポート」、「JavaScriptエンジン関連の強化」という2つが挙げられる。順番に紹介していこう。

1つめのWebGLは、Webブラウザー上で3Dグラフィックスを表示させるための規格であり、すでに他社Webブラウザーはだいぶ前からサポートしていた。ただし、Microsoftは2011年5月に発覚したWebGLのセキュリティホールを踏まえ、前バージョンであるIE 10での搭載を見送っている。そして同セキュリティホールの修正や、WebGLの普及率などを鑑みた結果、今回のバージョンで実装したのだろう。Microsoftでは、WebGLのデモンストレーションとして、エベレストの山々を3D表示するWebサイトを紹介している(図05)。

図05 WebGLのデモンストレーションの1つ「GlacierWorks」。ぜひご自身のPCで内容を体験して欲しい

このセキュリティホールの問題があってか、WebGLコンテンツ実行をする前に内容をスキャンし、安全が確認されない場合はソフトウェアベースのレンダラーを用いるという。つまり、GPUを利用するのは安全性を確認したWebGLコンテンツに限られるため、今後増えていくであろうWebGLコンテンツに対してのセキュリティ対策も、ひとまず安心して良さそうだ。

なお、Windows 8.1のIE 11では、Media Source ExtensionsなどHTML5で策定される、ドラフトレベルの仕様を一部サポートしていた。Windows 7とIE 11でTest Driveのデモンストレーションサイトにアクセスしてみたところ、「Windows 8.1のIE 11ではないので、MSEが使えない」といったメッセージが現れた。Windows 7版IE 11でメディアストリーミング関連機能が利用できないのか、バージョンチェックによる単純なミスかは分からないが、前述した相違点などを踏まえると、Windows 8.1用とWindows 7用のIE 11は完全に同一ではなさそうだ(図06/07)。

図06/07 HTML5のメディアストリーミング関連機能をテストしようとしたところ、Windows 7のIE 11では動作しなかった

JavaScriptの実行パフォーマンスを検証

そしてもう1つのJavaScriptは、IE 9時代から搭載していたJavaScriptエンジン「Chakra(チャクラ)」を強化し、事前にJavaScriptコードをバイナリ化するJITコンパイラの利用範囲拡大など、さまざまなアプローチで高速化を実現している。さらに、利用しなくなったメモリー領域を自動的に開放する「ガベージコレクション」のバックグラウンド動作を効率化することで、結果的にパフォーマンスの改善につながるそうだ。

MicrosoftはWindows 7版IE 11に対しても、「他のWebブラウザーより30%も高速化した」「IE 10より9%も速くなった」と公式ブログで述べている。そこで、同一のハードウェア環境でJavaScript系ベンチマークを実行することにした。

今回は、Nehalem世代のIntel Core i3-540(3.06GHz、開発コードネーム:Clarkdale)に16GBのメモリーを搭載した、やや古めのPCで測定を行っている。同PCは筆者が個人的に24時間運用を行っている簡易サーバーも兼ねているため、バックグラウンドでは各種ソフトが稼働している有様だ。そのため、実際の使用環境に近い数値を計測できたと思うが、同一のハードウェア構成より低い数値になった可能性が高い。この点はあらかじめご了承頂きたい。

続いて使用するベンチマークツールだが、JavaScriptの実行速度測定が中心となるため、デファクトスタンダードに数えられるSunSpider 1.0.2と、Microsoftが用意したEtchMark、そして公正を期するためにMozilla FoundationのKraken 1.1とGoogleのOctane 2.0も使用することにした。各ベンチマークを3回実行し、その平均値を数値として今回示している。また、IE 10およびIE 11だけでなく、参考としてMozilla Firefox 25とGoogle Chrome 30のベンチマーク結果も並べているので、併せてご覧頂きたい。

まずはSunSpider 1.0.2のベンチマーク結果。筆者が以前IE 11リリースプレビューを用いたベンチマーク結果と比べると相対的に異なるものの、IE 11が優れている結果になったのは同じだ。Microsoftが用意したEtchMarkの場合、IE 10およびIE 11の結果は同じだったため、あまり良い参考例とはいえないだろう(図08~09)。

図08 SunSpider 1.0.2のベンチマーク結果。グラフが低いほど優れている

図09 EtchMarkのベンチマーク結果。グラフが低いほど優れている

前述の通り、KrakenはMozilla Foundation製、OctaneはGoogle製のため、自社製Webブラウザーに有利な結果になるかと思ったが、KrakenではGoogle Chrome 30とMozilla Firefox 25はわずかな差だ。これら2つのWebブラウザーと比較して、Windows 7版IE 11はやや遅かったが、IE 10はさらに遅さが強調される結果となった。

OctaneはやはりGoogle Chrome 30がもっともスコアが高く、約14,000ポイント。IE 11はIE 10よりも高い約9,800ポイントとなったが、すべての面で他社製Webブラウザーをしのぐ結果にはいたらなかった(図10~11)。

図10 Krakenのベンチマーク結果。グラフが低いほど優れている

図11 Octaneのベンチマーク結果。グラフが高いほど優れている

全体的な性能や機能を踏まえると、JavaScriptエンジンに関する改善は引き継がれているものの、Windows 8 / 8.1のIE 11に加わった全機能がWindows 7版IE 11にも組み込まれている訳ではないようだ。だからといって、Windows 7ユーザーがIE 11へのアップグレードしない理由はさほど多くないだろう。前述したセキュリティ設定に関するトラブルが発生する場合は、TLSを無効にすることで対応できるからだ。

なお、社内やオンラインバンキングなど、アップグレードにより日常業務が滞るような可能性がある場合は、システム管理者からの通知や公式アナウンスによる安定動作を確認するまで、アップグレードを抑止する方法もある。今後Windows 7ユーザーは、Windows Update経由でIE 11へのアップグレードをうながされるので、IE 10を使い続ける予定の方は、「Internet Explorer 11自動配布の無効化ツールキット」の適用をおすすめしたい。

阿久津良和(Cactus)