10月1日から5日まで、千葉県・幕張メッセで開催されるアジア最大級のIT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2013」。同イベントのNTTドコモブースでは、ユーザー動向を統計データとして提供するモバイル空間統計の展示が行われている。モバイル空間統計とは、これまで地方自治体などへの防災用途などでの研究・調査での提供が行われていた技術で、10月1日から商用化され、一般企業などへの販売が開始されている。世界的に注目の集まっているビッグデータの活用、この手の技術は最先端で未来が広がる革新的なものであるといわれているが、特に個人情報の扱い等で誤解を生みやすい分野でもある。本稿では、このモバイル空間統計がどのような技術を紹介しよう。

CEATEC JAPAN 2013会場のドコモブース

モバイル空間統計とはどんな技術?

モバイル空間統計は、携帯電話などから得られる情報を統計データ化し、時間帯別、エリア別に集計する人口統計。法人契約を除く全国のドコモユーザーの情報が対象で、人口動向を24時間365日把握できるのが特徴だ。

モバイル空間統計の紹介パネル

基地局から得られる情報をもとにしており、最小で500m圏内に性別、年代別にどれだけの人口がいるかを1時間ごとに集計することができる。例えば東京・秋葉原に訪れる人がどれだけいて、そのうちの30代男性が一番多く訪れる時間帯は何時、といった詳細な情報を取得することができる。

東京23区の平日と休日の人口分布の変動イメージ。平日の17時にはビジネス街の人口が多いが、休日には減少する。夜でも平日と休日で動向が異なっている

こちらは東京・原宿駅周辺の人口動向。朝8時という時間的に出社する人が多いと見られ、男性の方が多い

14時になると、10代から20代の女性の方が多くなり、買い物客が増えたと分析できる

これまでは、「昼間人口」「夜間人口」といったかたちの人口動向はあったが、モバイル空間統計では、1時間ごとの実際の動きが分かるため、よりきめ細かい分析ができるようになる。

実際に埼玉県において防災用途で同技術を導入し、災害時に帰宅困難者数がどれだけ発生し、どこに避難場所や備蓄物資の集積をすべきか、といった対策を検討するのに活用された。このほか、沖縄県では観光用途で活用。沖縄を訪問した観光客が、いつ、どこに、どれだけいたのかを把握し、観光施策の立案などで利用された。さらに、千葉県・柏市では、人口動向を元にコミュニティバスを設置するのに活用されたなど日々の生活で役立つ技術として応用されはじめているところだ。

埼玉県による防災政策での活用事例

沖縄県の観光政策での活用事例

個人情報の取り扱いは? プライバシーに配慮した設計に

ドコモは今後、このモバイル空間統計で得たデータを販売する考え。小売業者での商圏分析など様々な分野で活用できるとしており、膨大なデータをもとにしたきめ細かい人口統計データの有用性をアピールする。

このデータ販売について、一部で「ドコモが個人情報を販売する」との誤解が広まったが、提供する個人情報は、秘匿処理が施される。内容は次のとおりだ。

ドコモの契約者情報に基づき、名前や電話番号などのデータを削除。非識別化処理によって個人が特定されないデータにした上で、住所はおおまかな情報に限定、年齢においても5歳単位に丸める。さらに集計データも最小で500mのメッシュで区切られた範囲で公開する、一定の範囲内に一定数のデータがない場合は除外する、などだ。このような秘匿処理が施されることで、販売データから個人を特定することはできないという。

ドコモでは、この販売データについて、総務省の「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」の報告書に従った匿名化措置を行い、再識別化をしないなど、個人のプライバシーに配慮した設計にしていると強調。匿名化措置の上で販売するため、購入側が個人を特定することはできず、再識別化も不可能と説明している。

なおドコモでは、2010年からモバイル空間統計の集計を始めており、当時からデータを提供したくないユーザーの除外処理を受け付けていた。今回の商用化にあたり、改めて除外を受け付けているが、現時点では「数万の下の数」程度の申請とのこと。適切な匿名化処理を実施しているため、除外措置の解除を申し出る人も出てきているそうだ。