テスト構成の概要

さてそのPCMark 8であるが、5種類のテストが用意されている。従来のPCMark07までと異なるのは、「代表的なベンチマーク」に相当するものがないことだ。PCMark07の場合、

  • PCMark
  • LightWeight
  • Productivity
  • Entertainment
  • Creativity
  • Computation
  • System Storage

という具合にテストが分かれていた。この中で代表値に当たるのがPCMarkで、ほかにワークロードにあわせて幾つかのテストが用意されているという具合だった。これに対し、PCMark 8では、

  • Home(Photo05)
  • Creative(Photo06)
  • Work(Photo07)
  • Storage(Photo08)
  • Application(Photo09)

の5種類のテストが用意されているが、代表値に相当するものは存在しない。結果についてもそんな訳で別々に扱う必要がある。このあたりは、同じく代表的なベンチマークがなくなり、"Ice Storm"/"Cloud Gate"/"Fire Strike"の3つのスコアをそれぞれ出すようになった3DMarkに非常に近いものがある。

Photo05: HomeではVideo Chatが入っている関係でOpenCL 1.1が利用可能。何で写真のアングルが逆なんだろう? (単に画像を反転しただけかもしれないが)

Photo06: CreativeではVideo EditingにOpenCL 1.2を、Group Video ChatにOpenCL 1.1を選択できる。ここでも豹の向きがなぜか逆。

Photo07: Workは一番テスト項目が少ないだけに、選択は最小。

Photo08: Storage Testは純粋にHDD性能のみの比較となっており、ドライブの選択のみ。で、何で蓮?

Photo09: ここで既にCreative SuiteなりMicrosoft Officeをインストールしていると、Settingsでテストを選ぶとアプリケーションの選択が有効になる。

具体的にそれぞれのテストにはどんな項目が用意されているのか、をまとめたのが表1である。Home/Creative/Workに関しては、10種類のWorkloadの中から適時選択する形になっており、Web Browsingだけは全てのテストに共通、というあたりは昨今の状況を反映したものだろう。

■表1

こうした複数種類のWorkloadを適時組み合わせるのはPCMark 7と同じであるが、

Workloadが整理された: PCMark 7では22種類(Secondary Storageまで入れると29種類)ものWorkloadがあり、しかも各々のWorkloadが3種類のベンチマークから構成されるため、トータルでは87ものBenchmarkが用意されていたのに対し、PCMark 8ではWorkloadが10種類(Storage/Applicationは除く)に絞られ、また各Workloadも少ないものは1つのベンチマークから構成されるようになった。

StorageのWorkloadがテストから省かれた: 例えばPCMark 7の場合、PCMark testは、

  • Storage - Windows Defender
  • Storage - Importing pictures
  • Storage - Gaming
  • Video Playback and transcoding
  • Graphics - DirectX 9
  • Image manipulation
  • Web browsing and decrypting

から構成されており、Storageの性能は個別に測定、一方その他のテストは極力Storageの性能に影響されないようにする(Memory中にCacheする)という形で行なわれていた。これに対してPCMark 8の10種類のWorkloadはいずれもStorage(それがHDDかSDDかは問わない)から読み出して処理して書き出すという手順を取っており、各々のWorkloadがStorageの性能の影響を受けるような形に改められた。

Application Testの搭載: これはAdvanced Edition以上で利用できる機能となっているが、AdobeのCreative Suite 6以降もしくはAdobe Creative Cloudを使ったAdobe Creative Suite test、及びMicrosoft Office 2010/2013を使ったMicrosoft Office testが用意された。このテストに当たっては、別途Adobe Creative Suite/Cloud、もしくはOffice 2010/2013をインストールする必要がある(これらはPCMark 8には含まれない)が、この実アプリケーションを使ってのテストがサポートされた。

従来だとSYSMarkがこうした実アプリケーションテストを担っていたが、バージョンがやや古い(最新のSYSMark 2012 1.5だとMicrosoft Officeこそ2010だが、Adobe Creative Suiteは5相当だし、IE 8とかFirefox 14.0などは既に現状にあっていない)し、テスト方法が不公平だとしてAMDが抜けるといった事もあって、既に広く使われているとは言いがたい。そんなわけで実アプリケーションが可能なのは非常に有用であると思われる。もっとも、今度はどうやってその実アプリケーションを入手するかという問題はあるのだが。

主要なテストではBattery lifeの測定も可能: これまでノートPCのバッテリー寿命のテストはBAPCOのMobile Markが専ら頼りであり、2011年にFutureMarkからもPowermarkはリリースされたものの、あくまでこれはビジネス向けという位置づけ(10 Activationの製品で$200から)だった。PCMark 8ではBasic Editionでもこれが可能(と思われる。少なくともWhitepaperを読む限り、Advanced Edition以上といった記述はない)となった。ちなみにこのテストでは、バッテリーが80%以上の充電状態から開始し、20%未満に減ったところでテスト終了となり、そこから推定バッテリー寿命を計算するという仕組みである。複数のマシンあるいは構成でバッテリー寿命比較を行なう筆者のような関係者には助かる仕組みだ。ちなみにBattely lifeはStorage以外の全テストで可能である。

OpenCLに対応: Video Editing/Video Chat/Video Group Chatの3つのWorkloadでは、OpenCLを使うことも可能である。選択肢としては利用しない/CPUベース/GPUベースという感じで、CPU+GPUの構成は存在しない。

といったあたりがPCMarkと異なる部分である。

実際にベンチマークが開始されると、こんな具合にProgress Barが表示され(Photo10)、実際のベンチマークが動く(Photo11)。実行が終わると、結果が表示されて終了である(Photo12)。なお、Storageテストに関しては、実際のアプリケーションを模したHDDアクセスを行なってその結果を表示する(Photo13)ということで、実行中は単にProgress Barが伸びてゆくだけ。Application Testについては、例えばWordだとこんな具合(Photo14)にWordが起動され、指定されたシナリオにそって操作が行なわれて、やはり最後に結果が示される形だ。

Photo10: なんでか虫。下のProgress Barの刻み数はテストによって異なる。

Photo11: これはWeb BrowsingのAmazoniaというテスト。IEをプログラム中から呼び出して実行している。

Photo12: 結果の表示は3DMarkに似ているが、テスト項目毎に結果の単位はまちまち。ここから結果の保存や逆に保存したファイルからの読み出し、あるいはXMLファイルへのExportも可能。Online Result Browserへの出力は、将来は可能になるようだが現時点では無効化されている。

Photo13: Storage Testの結果。10種類のベンチマークが行なわれ、それぞれの所要時間から平均転送速度が算出される。

Photo14: これは別のドキュメントからCopy&Pasteで貼り付けた後で、そこに文章を入力している途中の操作。ここではキーストロークを模すため、1文字入力するごとに若干のSleepを入れてある。

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