製品ラインナップとパフォーマンス
ここからは製品別に紹介が続いた。まずはローエンドにあたるFirePro V3900(Photo006)。対抗製品はNVIDIAのQuradra 410である。
Photo006:Amazon.co.jpでは22,165円だった。Quadro 410はELSAのものが16,109円で、若干V3900が高いが、まぁ同クラスである |
V3900はTurks(Radeon HD 6570)相当のコアで、一方Quadro 410はGK104(GeForce GT 640)相当のコアである。スペックもさることながら実性能においてもV3900が上であることが示された(Photo007)。
その上位にあたるのがFirePro V4900で、V3900と同じTurksベースながら動作周波数をやや引き上げた、Radeon HD 6670相当のモデルである(Photo008)。
Photo008:Amazon.co.jpでは28,420円。競合するQuadro K600はやはりELSAのものが20,514円 |
競合製品として名前が挙がっているQuadro K600はKeplerベースのGK107をベースとした製品であるが、動作周波数的に一番近いのはGeForce GT 635で、当然ながら性能差は(上位モデルのQ2000はともかく)かなり大きい(Photo009)。
ミッドレンジ製品にあたるのがFirePro W50000(Photo10)である。こちらはPitcairn LEをベースとしており、しいていえばRadeon HD 7850のサブセット(Radeon HD 7830なる製品が一度うわさになったことがあるが、このスペックに近い)である。
Photo10:W5000はAmazon.co.jpでは扱いが無かったが、Amazon.comでは431.99ドル、競合するQuadro K2000はELSAのものが(こちらはAmazon.co.jpで扱いがあり)56,893円 |
競合製品としては、やはりGK107ベースのQuadro K2000がラインナップされている。これに関しては、3種類ベンチマークが示された(Photo11~13)が、見ると判るとおりSPECviewperfに関しては、K2000がW5000を上回る結果になっているものが多い。
Photo12:SPECviewperfではPTCのPro/ENGINEER Wildfire 5.0というモデリングツールを使うが、SPECapcはPTC CreoというPro/ENGINEERの次世代製品でのテストになっている |
ところが、個別にテストを行なうと、逆にW5000の方が高い性能になっている。これについてCaracappa氏は"SPECviewperfはArfiticcial Benchmarkだから"と説明したが、話はもう少し複雑である。
SPECviewperfは、SPEC(Standard Performance Evaluation Corporation)が提供するベンチマークである。この組織はCPU/GPU/MPI/Java/etc……の様々な分野にまたがるベンチマークを提供しており、その中でもWorkstation向けのグラフィック性能を測定するベンチマークがSPECviewperfとなっている。
最新版は2010年にリリースされたSPECviewperf 11であるが、実はこれが結構古い。これは最低要求がOpenGL 1.5+extensionというあたりからも判る。
SPECviewperfは実際のアプリケーションを使ってのベンチマークであり、
- LightWave
- CATIA
- EnSight
- Maya
- Pro/ENGINEER
- SolidWorks
- Siemens Teamcenter Visualization Mockup
- Siemens NX
という8つのアプリケーションがSPECviewperfに含まれており、これを使って動作速度を判断する仕組みである。問題は、これらのアプリケーションが最新版でないことである。
これとは別にSPECは個別アプリケーション用のベンチマークも提供している。たとえばPhoto11はAutodeskのMayaの結果だが、一番左にあるSPECviewperfは、Maya 2009を使っての結果である。
一方その横にある3つの結果はSPECapc for Mayaのもので、こちらは最新のMaya 2012を使っての結果である。要するにSPECviewperfの結果は最新版のアプリケーションのものではなく、最新版を使っての比較は個別のSPECapcを利用することになる。
「んじゃSPECviewperfなんて要らないのでは?」といわれそうだが、SPECapcの場合、配布されるのはベンチマーク用スクリプトのみで、実際のアプリケーション(つまりAutodesk Maya 2012)はベンチマークを行なう人間が用意する必要がある。
ところがこれらのベンチマークは何しろプロ用だから、どうかすると一式数十万とか数百万のオーダーの値段がついているし、インストールも大変である。それゆえ、手軽にベンチマークというわけにはいかない。
このあたりがSPECviewperfは非常に楽(何しろ無料で配布されるし、インストールもワンタッチ)という訳で、未だに両方使われているわけだ。ただAMDとしては当然最新版にあわせて最適化した結果、古いバージョンではやや性能を落とすことになった。そこで誤解しないように、ということで細かくベンチマーク結果を出してきた訳だ。
その上位にあたるのがFirePro W7000(Photo14)で、Quadro K4000の競合製品と位置づけられている。
Photo14:W7000はAmazon.comで708.10ドル。K4000はAmazon.co.jpで115,753円 |
W7000はPitcairn XTコアで、Radeon HD 7870に近い(動作周波数は若干低い)もの、対するK4000はGK106GLベースで、GeForce GTX 650 Tiよりコアクロックを落としてメモリクロックを引き上げたといったところで、性能差は更に大きい(Photo15)。
さらにその上のハイエンド向けとして用意されているのがFirePro W8000(Photo16)である。W8000はTahiti PROベースであるが、Radeon HD 7950 Boostよりもう少しだけ動作周波数を引き上げた構成。
Photo16:W8000はAmazon.comで1374.57ドル、一方K5000はELSAの製品がAmazon.co.jpで172,138円 |
競合製品はQuadro K5000と位置づけられているが、こちらはGK104ベースで構成的にはGeForce GTX 680に近いものの、動作周波数がやや低められており、GeForce GTX 670と680の間くらいの性能となる。結果、性能差もかなり大きなものになっている(Photo17)。
ちなみにラインナップとしては、AMDは更にFirePro W9000を持っているが、これは競合する製品が無い(Amazon.comだと$3271.99(!)である)こともあってか、今回の比較にリストには入っていない。
そこで氏は話を転じて、PCIe Gen3のメリットについて説明した(Photo18,19)。これはどういうことかというと、AMDの場合はローエンドのV3900/V4900はともかく、その上のWシリーズはいずれも28nmプロセスのSouthern IslandシリーズコアでPCI Express Gen3をサポートしている。
Photo18:これはAssimilate Scratchという映像再生ソリューションを利用した場合の結果で、4K解像度だとほぼ倍のスループットが利用できるとする |
一方のQuadro系列は、まだFermi系列とKepler系列が混在していることもあり、PCI Express Gen3に対応しない製品もある。それを前提にした上で、たとえば4K解像度における出力(Photo18)や、GPGPU的な用途(Photo19)ではPCI Express Gen3に対応したFireProシリーズが有利、という話である。
この話そのものは正しいのだが、さすがに「でもAMDはそもそもAMD-FXでもOpteronでもPCIe Gen3のプラットフォームを提供していないのでは?」と突っ込んだところ、「それはそうだが、それはNVIDIAも同じだ」と切り返された上で「我々はすべてを同時にやることは出来ないので、一度に一つずつ進めてゆく」との返事だった。
もっとも氏はPhoto001のキャプションにもあるように、あくまでGraphics担当であるから、CPU側のプラットフォームまでは知らん、ということなのかもしれない。
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