カナダのBlackBerry(旧Research In Motion)のCEOであるThorsten Heins氏は、タブレット端末の将来性に疑問を呈し、同社のタブレットへの取り組みが積極的でないことを示唆した。米Bloombergとのインタビューで語られたもので、同誌のほか複数のメディアが報じている。

インタビューでHeins氏は、「タブレットを使う理由は、今後5年以内になくなるように思う」と語った。その理由として、「仕事場には大きなスクリーンがあるかもしれないが、それはタブレットではないだろう。そして、タブレットは良いビジネスモデルではない」と述べている。

BlackBerryといえば、2011年にタブレット端末「PlayBook」を投入したが、売れ行きが低迷し、大幅な値下げを余儀なくされ、同年末には4.85億ドルの在庫評価損の計上を発表した過去がある。Heins氏は2013年1月のインタビューでも、採算がとれないのであればPlayBookの後継機種を検討することはない、とBloombergに述べており、タブレット端末の将来性に疑問を呈した今回の発言は、同社のタブレット市場からの事実上の撤退宣言と読み取れるかもしれない。

しかし、5年以内にタブレットを使う理由がなくなるという同氏の発言には反論もある。たとえば、米TechCrunchは「タブレットは、BlackBerryにとっては確かに良いビジネスモデルではないだろう。しかし、それはAppleのiPadによる驚異的な成功を明らかに無視している」と指摘している。

確かに、Appleの成功例を見れば、タブレットのビジネスモデルまでを否定するのは行き過ぎのようにも思える。だが、iPad以外に成功したタブレット端末として挙げられるのは、Googleの「Nexus 7」、Amazonの「Kindle Fire」といったサービス主体の低価格端末だ。AppleのiPadのようにブランド力で勝負できないメーカーの場合、これらの端末との低価格競争に巻き込まれることになり、苦しい戦いを強いられる。その点を考えれば、タブレットが良いビジネスモデルではない、というHeins氏の発言にもうなずける。

また、Heins氏はインタビューで「今後5年以内に、BlackBerryはモバイルコンピューティングの絶対的リーダーとなることを目指している。可能な限りのマーケットシェアを獲得したいと考えているが、それは模倣によって行うのではない」とも述べている。BlackBerryは先週末、英国でスマートフォン新機種「BlackBerry Q10」を発売したばかりだ。従来のBlackBerryスマートフォンと同様にQWERTYタイプの物理キーを搭載した同端末の売れ行きについて、同氏は「非常に良い感触を得ている」と発言している。

なお、BlackBerryは公式コメントとして、同氏の発言を補足している。コメントによれば、「(Heins氏の発言は)全体的なモバイルコンピューティングの未来について語ったものであり、われわれはタブレット戦略の評価を続けていく。短期的な戦略について変更はない」とのこと。

タブレット市場からの撤退とも読み取れ、話題となっている今回のHeins CEOの発言だが、まずは新OSを搭載したBlackBerry Q10およびZ10というスマートフォンの販売に注力するという意思の表れと見ることができる。BlackBerryの象徴ともいえる物理キー搭載のQ10の売れ行きが、同社復活の試金石となることは間違いない。