GIGABYTEと言えば、Dual BIOSやUltra Durableといった安定・品質機能を旗に掲げ、古くから日本のマザーボード市場に定着してきたメーカーという印象だ。今回、そのGIGABYTEの本社にて、マザーボード担当の開発責任者に直接質問できる機会を得ることができたので、GIGABYTEマザーボードの製品コンセプトについてお話を伺った。
――まず自己紹介いただきたいのですが、GIGABYTEのマザーボード開発において、どのような役割をされているのでしょうか。
Jackson Hsu氏:2人とも肩書きのとおり、製品に関するありとあらゆることが対象になりますが、私の場合は新製品開発にあたって、既存の製品や市場から得られたフィードバックを各国の営業から吸収し、製品に反映させていくことが仕事になります。
また、エンドユーザーだけでなく、Intel、AMD、その他マザーボード上に搭載されるチップベンダーとの繋がり、情報を吸収したり製品に反映させていくことも業務のひとつです。
――フィードバックを製品に反映していくプロセスについてお聞かせ下さい。まず、例えばGIGABYTEマザーボードでは、リビジョンという形で製品がアップデートされていくことがありますね。一方で型番の異なる新製品として展開される場合もある。この2つの違いについて教えてください。
まず新製品として展開する場合ですが、例えばIntel P55チップセットの際、そのプラットフォームのライフサイクルの途中で、これからUSB 3.0という新たなインターフェイスが普及する、というタイミングが来ました。大きなインパクトですね。このような場合においては、それまでの「P55」シリーズに代わり、新製品「P55A」シリーズを展開するといった判断をしました。
一方で、リビジョンチェンジにはそこまでのインパクトはありませんが、例えばLANやオーディオ、その他インターフェイスなど、基本仕様に変更は無いものの、調達面からそのチップコンポーネントを変更せざるを得ないような場合などで行なっています。そして、当然、その製品ライフサイクルのなかで得られたフィードバックが反映されるということもあります。
フィードバックがリビジョンチェンジにつながった例としては、GA-Z77M-D3H Rev.1.1が挙げられます。GA-Z77M-D3H Rev.1.0では4ピンATX12Vを採用していましたが、Rev.1.1では8ピンEPS12Vに変更しました。
もちろん4ピンATX12Vでも問題はありません。しかし、他社の同等製品が8ピンEPS12Vを採用していたため、一部の地域から「スペック的に見劣りするのはどうか」というフィードバックが上がりました。それに基づき設計変更した結果、Rev.1.1としてリリースすることになりました。
――リビジョンアップという形は、「ややこしい」だったり、発売当初購入したユーザーからすれば「同じ製品名なのにスペックが異なる」といった意見もありますが、どうお考えでしょうか。
それは感じています。しかし長い目で見ると異なった考え方もあります。例えばIntel Z77チップセットは、おそらく2013年に次世代のチップセットが登場したとしても、さらに長く利用されるチップセットになると考えられます。7シリーズチップセットが登場した現在も6シリーズマザーボードをリリースしているように。
そう考えた時、じゃあ今Intel Z77マザーボードを買おうというお客さんに、製品の発売当時のスペックをお勧めしてよろしいでしょうか。息の長い製品であればあるほど、製品的に改善の余地があると思われる際には積極的に反映していったほうが、その時々のお客さんに満足していただけると考えています。
ただし一方で、リビジョンチェンジもあまり頻繁に繰り返しては混乱を招いてしまいます。明確なルールというのは決めていませんが、個別にバランスを見ながら対応しています。
なお、Rev.1.0からRev.1.1というコンマ刻みの場合はマイナーリビジョンチェンジ、Rev.1からRev.2という1の桁が変わる場合はメジャーリビジョンチェンジとして考えています。さらに大きなインパクトがある場合には、先に述べた通りモデルチェンジで対応しています。
――各国エンドユーザーのフィードバックに、地域的な傾向や頻度といった違いはあるのでょうか。
例えばフィードバックが多いのは日本と韓国、続いてアメリカ、ヨーロッパになります。もちろん台湾もです。比較的先進国市場からのフィードバックが多い傾向にあります。これらの国々からはスペック的なフィードバックが多く寄せられます。
一方、新興国市場からも多くのフィードバックを得ています。新興国からのフィードバックは、品質面に関するものが多く寄せられます。例えば東南アジア諸国は気候面に関するものが寄せられます。
また、各国で電気状況も異なりますので、頻繁に停電が起こるような地域からは、停電が起こっても耐えうる電源回路が求められます。地域的なものに基づくフィードバックが多いですね。
――こうしてお聞きすると、国や地域ごとで、様々なフィードバックが得られるようですね。そのフィードバックは、個々の地域に合わせて反映されるのでしょうか。あるいは全世界的に反映されるのでしょうか。
GIGABYTEでは、6シリーズチップセット搭載マザーボードで、Ultra Durable 4 Classic(以下UD4C)を採用しました。ちょうどこれが先の例で言えばまさに東南アジア諸国からのフィードバックを反映させた機能になります。UD4Cは、防湿、防静電、防電断、防熱という4つの面にフォーカスした品質基準になります。
防湿の点で説明させていただくと、例えばPCB基板というのは、繊維(グラスファブリック)を織り込んだ構造をしています。UD4Cは、この織り方に変更を行いました。具体的には、従来の織り方のPCB基板では、マザーボードのマウントホールといった隙間から微量の湿気が繊維と繊維の隙間に少しずつ入り込むようなことがありました。そして乾燥と高湿とを繰り返していく中で徐々に変形を起こし、故障につながるという問題が、とくに高湿度な地域であったのです。
UD4CのPCB基板は繊維の織り目をより細かくすることで、繊維の隙間に湿気が入り込むことを防いでいます。日本はもちろんですが、東南アジアなどより湿気の高い地域でも安心して使える品質を実現しています。
次回『GIGABYTE本社のマザーボード開発責任者に聞いてきた(中編) - Z77新シリーズ「GA-Z77X UP」の真髄』に続く