AppleとSamsungの間で行われている特許紛争だが、その過程で2000年代前半にAppleがiPadの原型となるプロトタイプを作成していたことが明らかになり、数々のiPhoneのプロトタイプの姿が登場するなど、その副産物ともいうべき証拠が多数出てきて世間を賑わせている。一方、裁判は現在進行形で進んでおり、Apple幹部の証言からiPhone開発当時の社内の様子が伝わってきたり、噂の7インチiPadに関するプロジェクトの話題が出てきたりと、その行方に注目が集まっている。
iPhone/iPadのプロトタイプ画像の数々はSamsungが意図的にリーク
前述のように裁判の過程で登場したiPhoneのプロトタイプに関する画像や資料の数々だが、実はSamsung側が「Samsungの製品はAppleの模倣ではない」ことを示すため、Appleがプロトタイピングの段階で作ってきたモックアップやスケッチの数々を証拠として提出したものだ。前回のiPhoneプロトタイプのレポートを参照いただければわかるが、「Appleがもしソニーだったとしたらこういうデザインの携帯電話を作る」というコンセプトの下に「JONY」ロゴの入った当時のソニーエリクソン製携帯電話の機能に酷似した端末を用意するなど、Apple自身がライバルの影響を受けた可能性をこれらの証拠により主張している。
だが、これらの証拠は本来社外秘のもので、裁判の証拠として提出されたに過ぎない。これらを意図的にメディア関係者に流布したとして、Appleは同裁判の判事であるLucy Koh氏に「Samsung側に制裁を与えるか、何らかの適切な措置を講じるように」との訴えを起こしたとApple Insiderが8月2日(米国時間)に伝えている。Samsung側の弁護人であるJohn Quinn氏は今回の情報リーク行為について、「"倫理的"で"法的"な観点から情報を公に共有すべきと判断した結果だ」とその理由を説明している。だがApple側では同件について訴訟を起こした理由について、「先入観を与えるもの」とSamsungを非難している。
iOS開発責任者を任命する際にJobs氏が語ったこと
さて、8月3日(現地時間)より再開された裁判ではApple側から次々と幹部社員が登場し、iPhone開発に関するエピソードを語っている。特に興味深いものの1つは、現在iOS開発の顔として知られるScott Forstall氏の証言だ。
All Things Digitalによれば、当時のAppleにおける携帯電話開発はトップシークレット中のトップシークレットにあたるプロジェクトで、その名を「Project Purple」と呼ばれていたという。2004年に同プロジェクトチームを組織する際、諸般の理由から外部の協力者を得られなかったSteve Jobs氏はプロジェクトリーダーとしてForstall氏をオフィスへと呼び出し、「われわれがこれからスタートするプロジェクトは、その内容を伝えることができないほどの秘密のものだ。今後数年間、夜や週末の休息を犠牲にする必要があるだろう」と、その覚悟を説くほどだったという。
このプロジェクトは最終的に3年近い月日を経てiPhoneへと結実するわけだが、それほどまでにAppleにとって重要なものだったわけだ。9 to 5 Macによれば、プロジェクトの規模はForstall氏直轄で1,000人、それ以外のスタッフを合わせて計2,000人ほどの大プロジェクトだったという。なお、社内でもプロジェクトの存在は秘密であり、入り口には「Fight Club」のポスターが掲げてあっただけだという。