AppleのApp Storeに登録されているiOSデバイス向けアプリのうち、3分の2はダウンロードも行われず、ランキングに登場することもない"ゾンビアプリ"だという分析が話題になっている。ランキング上位に登場するのは何百万ドルもの予算をかけた大手開発のアプリばかりで、個人や中小のアプリ開発者には露出の機会さえほとんどないのだという。

この件はGigaOMが報じている。元の調査報告はモバイルプラットフォーム調査会社のAdevenが行ったもので、Apptraceのツールを使った調査により、具体的なデータが浮かび上がってきている。

このApptraceのツールでは、各アプリのユニークIDと動静を把握し、世界各国の各カテゴリでのランキングへの露出度やダウンロード動向を計測できるようになっている。それが示したのは、App Storeにあるアプリのうち、40万ほどのアプリはランキングに露出せず、ダウンロードもされずに眠ったままの、いわゆる"ゾンビ"状態にあるという事実だ。米Apple CEOのTim Cook氏は今年6月に開催されたWWDC 2012において、現在App Storeには65万以上のiOSアプリが登録されていると基調講演で発表している。つまりApp Storeのアプリのうち、約3分の2がこの"ゾンビアプリ"ということになる。

WWDC 2012の基調講演で65万以上というApp Storeのアプリ総数に言及するTim Cook氏(AppleのWebサイトで公開されている基調講演のビデオより)

Adeven CEOのChristian Henschel氏がGigaOMに語ったところによれば、現実にダウンロードされるのはわずか数千程度のアプリに偏っており、これはAppleのクローズドなシステムに依るものという。ランキングに登場しない多くのアプリは露出する手段も提供されず、発見が困難な状態で眠ったままの状態にあるということだ。しかもランキングのトップ25に登場するアプリは、アプリ開発や露出に数百万ドルもの資金を捻出できる大手デベロッパーによるものであり、個人や小規模のアプリ開発者が制作したアプリは、ランキングに露出してユーザーに発見してもらうことすら非常に困難だというのだ。

3月にはApp Storeのアプリダウンロード数が250億を突破したとの発表があった

もっとも、こうした話は実際にモバイルアプリ開発現場に近い人間であればある程度実感していることであり、それが改めてデータとして示されたというのに過ぎないかもしれない。App Storeでの成功例の多くはマーケティングやプロモーションに絡んだ話題が多く、露出機会の増加がほぼそのままダウンロード数の増加に直結する。筆者もいくつかのiOSデベロッパーカンファレンスに出た機会があるが、成功者からのアドバイスとして「アップデートやアプリのリリースをこまめに行い露出機会を増やす」「メディアの知り合いや友人を作る」といったものが多く、「とにかく人の目にとまること」が重要のようだ。