操作面での特徴は、ケンコー・トキナー「PRO」シリーズでおなじみの「ワンタッチ・フォーカスクラッチ機構」を採用したこと。これは、フォーカスリングを手前にスライドさせることで、AFからMF(マニュアルフォーカス)へと素早く移行する仕掛けだ。フォーカスリングにはほどよいトルクがあり、操作感は悪くない。ズームリングについても、ねっとりとした感触が心地よい。

フォーカスリングの回転方向は、キヤノンとニコンそれぞれの純正レンズと同じだ。一方、ズームリングの回転方法は、キヤノン純正レンズとは逆で、ニコン純正レンズと同じになる。

「ワンタッチ・フォーカスクラッチ機構」AFの状態

「ワンタッチ・フォーカスクラッチ機構」MFの状態

AFは、独自のGMR(高精度磁気センサー)とSD-M(Silent Drive-Module)、およびレンズ内モーターによって高速かつ正確に作動する。ギュギュという小さなAF駆動音が鳴るが、気になるほどではない。

写りは、高コントラストでくっきりとした描写だ。下の写真は、航空科学博物館に展示されたジャンボジェットの頭部を見上げるアングルで撮影したもの。17mmという広い焦点距離は、実際の見た目以上に遠近が強調されるので、被写体のスケール感や迫力を表現するのに最適だ。絞りをF8まで絞り込み、近景から遠景までをシャープに再現した。

絞り:F8 / シャッター速度:1/400秒 / 露出補正:-0.6 / 感度:ISO100 / WB:晴天 / 焦点距離:17mm

絞り:F8 / シャッター速度:1/250秒 / 露出補正:±0 / 感度:ISO100 / WB:晴天 / 焦点距離:27mm

次の4枚は、渥美半島を旅しながらスナップした風景だ。1枚目の灯台の写真は、絞りを開放値のF4に設定したが、中央部はきっちりと解像し、灯台や岩の質感がリアルに再現されている。周辺部についてはやや甘さが見られるが、必要に応じて1~2段絞り込めば、四隅までシャープな描写になる。また、17mm側の開放値では周辺減光がやや顕著だが、これも絞り込むことで解消する。

絞り:F4 / シャッター速度:1/2500秒 / 露出補正:-0.3 / 感度:ISO100 / WB:晴天 / 焦点距離:17mm

絞り:F16 / シャッター速度:1/30秒 / 露出補正:-1.3 / 感度:ISO100 / WB:晴天 / 焦点距離:17mm

絞り:F10 / シャッター速度:1/200秒 / 露出補正:±0 / 感度:ISO100 / WB:オート / 焦点距離:17mm

絞り:F8 / シャッター速度:1/640秒 / 露出補正:-0.6 / 感度:ISO100 / WB:晴天 / 焦点距離:35mm

次の写真は、レインボーブリッジを逆光で捉えたもの。絞りをF16まで絞り込むことで、太陽から放射状に広がる光芒(光のスジ)を表現した。本レンズは9枚の絞り羽根を採用しているので、光芒の数は9の倍の18本となる。色収差はほとんど気にならず、歪曲収差についても広角ズームとしては少なめだ。

絞り:F16 / シャッター速度:1/400秒 / 露出補正:-1 / 感度:ISO100 / WB:晴天 / 焦点距離:17mm

次の写真も、同じく逆光の光線を生かしながら、絞り込んで撮影したものだ。カメラをローアングルに構えることで近景に草を写し込み、奥行きを表現。ゴーストやフレアがやや生じているものの、これほどの完全な逆光でもコントラストはあまり低下していない。

絞り:F13 / シャッター速度:1/400秒 / 露出補正:+0.3 / 感度:ISO100 / WB:晴天 / 焦点距離:17mm

絞り:F5.6 / シャッター速度:1/40秒 / 露出補正:+2/ 感度:ISO320 / WB:晴天 / 焦点距離:29mm

今回の試用では、焦点距離の短さを活かして主に広がりのある風景を狙ったが、絞り込んだ際の切れ味のある描写には十分に満足できた。また、フルサイズのカメラで広角から望遠までのレンズ一式を揃えると、どうしても機材が重くなってしまうが、その点でも本レンズのコンパクト設計は魅力的だ。荷物をできるだけ減らしたい旅行時の撮影などでは、標準ズームだけでなく、このレンズを追加することで表現力が大きくアップするだろう。

使い勝手と携帯性、描写性能の3つのバランスが取れた広角ズームとして、フルサイズの一眼カメラユーザーにオススメしたい。