既報のとおり、ワコムのプロフェッショナル向けペンタブレット「Intuos」シリーズから、最新モデルとなる「Intuos5」がまもなく発売される。この最新モデルの発売を前に、本記事では「Intuos」シリーズの変遷を紹介したい。1998年に発売された初代「Intuos」から発売直前の「Intuos5」まで、その機能やスペックの進化過程を大まかに辿ってみよう。
初代「Intuos」
1998年9月に発売された初代「Intuos」。1,024レベルの筆圧機能と、±64レベルの傾き検出機能など、当時としては圧倒的なスペックを誇り、多くのクリエイターにその表現力を印象づけた。
また、ペンをひっくり返して使う「消しゴム」機能や、ペンを握ったままでクリック操作を実現する「2サイドスイッチ」、さらに複数のペンをカスタマイズして使い分け可能な「デバイスID」機能など、現行品でもおなじみの多くの機能がこの初代モデルから搭載されている。
タブレットのサイズはA6~A3までの全5タイプを用意。上位3モデルにはスタイラスペンに加えて、画面のスクロールや拡大/縮小、オブジェクトの回転といった操作が可能な「4Dマウス」を同梱した。ペンと4Dマウスは目的によって使い分けることで作業効率が一段と高まる。
「Intuos2」
それから3年後の2001年、後続モデルとなる「Intuos2」が発売された。Intuos2では、ペンの仕様を大幅にリニューアル。握りやすく滑りにくいラバーグリップを採用したほか、ペン軸の太さや重さのバランスも改善、さらにサイドスイッチの着脱も可能となった。
初代モデル同様、上位3モデルには新しくなった「4Dマウス」を同梱。さらに下位モデルにも機能を限定した「2Dマウス」を付属させることで、全モデルでマウスを標準装備させた。
なお、タブレット本体のデザインに目立った変化は見られないものの、人気のA5/A4サイズのみ、追加のカラーバリエーションを用意した。
「Intuos3」
2004年に発売された「Intuos3」では、主にタブレット本体のデザイン面を改善した。これまでタブレット上部に配置されていたボタン列をなくし、新たに本体上部にファンクションキーとトラックパッドを搭載。ペンとの両手操作をさらに容易にし、作業効率の向上を図った。
また、付属のグリップペンにおいては、ペン軸を長くしたほか、重心バランスとペン先の握りなどを改良。さらに、ユーザーの好みに応じて描き心地を変更できるよう、ポリアセタール芯、フェルト芯、ストローク芯という3種類の芯先を標準装備した。このほか、オプションで2種類のオーバーレイシートも揃えるなど、カスタマイズの幅を大きく広げている。
基本性能においては、読取分解能(ペンの細かい動きを読み取る性能)が「Intuos2」の2倍である0.005mmへ進化している。
「Intuos4」
2009年に登場した「Intuos4」では、さまざまな面でこれまで以上の機能改善が行われた。特にペンに搭載するICとセンサーを新開発したことで、筆圧機能がこれまでの1,024から2,048レベルに倍増。同時に、最小ON荷重はこれまでの10gから最小1gまで設定が可能となり、軽いタッチでの表現力を大幅に向上させた。
また、タブレット本体のファンクションキーも片側へ再配置されたほか、直感的に使えるタッチホイールを新たに搭載。さらに、各ファンクションキーに設定された内容を表示する有機ELディスプレイも備える。表面はマットタイプのオーバーレイシートに仕上がっている。
付属の替え芯は、「Intuos3」に標準装備の3種類のほか、新たにエラストマー芯が加わった。また、ペンを太くカスタマイズできる太径ラバーグリップなども同梱された。
「Intuos5」
そして2012年3月16日に発売される最新モデル「Intuos5」。「Intuos」シリーズとしては初となるマルチタッチ/ジェスチャー機能を搭載したペン&タッチモデルを発売。またファンクションキーに指を置くだけでモニター画面に設定内容を透過表示させるヘッドアップディスプレイ機能「エクスプレスビュー」を新搭載するなど、直感的な操作性を高める機能が多数追加される。
また、全モデルで「ワコムワイヤレスキット」(別売り)によるワイヤレス接続に対応するほか、同キット付属モデルも用意されている。このほか、タブレット本体はマットブラックのラバー仕上げで、快適性も向上させた。
1998年の初代モデル発売以来、表現力、作業効率、カスタマイズ性などを絶えず向上させてきた「Intuos」シリーズ。以上のような変遷を経て開発された最新モデルでは、これまで以上に快適性が増し、クリエイティブな制作作業を後押しする環境が整った印象だ。3年振りに新しくなったその使用感を、ぜひその手で確かめてはいかがだろう。