米Microsoftは、9月13日(米国現地時間)より次期Windowsである「Windows 8」(仮称)に関するイベント「Windows Build」を開催する。その前日、プレス関係者向けにWindows 8の概要を公開した。ただし、説明会場では、一切の写真撮影ができなかった。

明日からWindows Buildが開催されるアナハイムコンベンションセンター。アナハイム市は、ディズニーランドのある米国の著名な観光地

Windows 8には、新しいアプリケーション環境であるMetro Styleが搭載される。今年6月にWindows 8のユーザーインターフェースをビデオで公開したが、今日デモで利用されたバージョンは、これと同じもの。内部的には、Milestone 3と呼ばれるバージョンだ。

Microsoftは、従来のWindowsの上に新たにWinRTと呼ばれるMetro Style専用の実行環境を作った。その上では、C/C++または、C#/Visual BASICでアプリケーションを開発することができるほか、HTML5+Javascriptでもアプリケーションを作ることができる。

WinRTは、Metro Styleアプリ用の実行環境だが、どうも従来のWindows(Win32サブシステム)の上に乗っている。.NET Frameworkと似たものだが、C/C++、C#/Visual BASIC側からは表示にXAMLを利用するようだ。おそらく、.NET Frameworkとよく似たもので、アプリケーションのスタイルだけがちがうもののようだ。

Metro Styleの実行環境の図。説明時のスライドから筆者が作図。図ではカーネルサービスの上にWinRTが載っているが、Win32とまったく無関係というわけではなく、Win32の機能とも関連しており、従来のWindowsの中にWinRTを構築したという感じらしい

Metro Styleアプリケーションは、全画面を占有して動作し、画面全体を切り替えることでアプリケーションを切り替える。また、WindowsのデスクトップもMetro Styleからみると1つの画面のように扱われている。

また、画面を1/3、2/3に分割して2つのアプリケーションを同時に表示することが可能だが、このとき1/3側のアプリケーションは、簡易表示になる。こうしたアプリケーションの実行環境とそのためのAPIを装備したのが、WinRTだと考えられる。Metro Styleアプリケーションは、ローカルやインターネット側(たとえばWindows LiveのSkydriveサービスなど)のファイルを扱うことができる。スタイルとしては、アプリケーションが対応可能なファイルをリストアップして、その中からユーザーが選択するようなやり方で、従来のWindowsアプリケーションのように、エクスプローラーのようなファイルブラウザを使ってファイルを指定するのとはやり方がちがう。

また、操作は、タッチ(タッチパネルを使った指による操作)で行うが、マウスとキーボードでも同様の操作が可能だ。Metro Style自体がタッチ操作を考慮していて、Windowsデスクトップのように小さなボタンなどを操作するようなところがなく、操作感覚はかなりスムーズでストレスもない。従来のWindowsでは、マウスのようなポインティングデバイスとしてタッチパネルを扱っていて、そこにタッチ操作が組み込まれた関係で、たとえば、Webブラウザのページをスクロールさせようとしても、動かなかったり、リンクをクリックしてしまうようなことがあった。しかし、Metro Styleでは、タッチ操作とマウス操作が分離されているためか、従来のような操作ミスはなく、操作感はかなりよく、AndroidやiOSのタブレットと遜色ない使い心地だ。

そして大きなメリットは、従来のWindowsでもある点で、Microsoftは、Windows 7で動作するものはすべてWindows 8でも動作するとしている。このほか、Sliverlightアプリケーションはそのままでもブラウザ内で動作するが、わずかな手直しでMetro Styleアプリケーションのように動作させることも可能だという。基本のAPIなどは同じだが、Sliverlightは、XAML(あるいはWindows Presentation Foundation)のサブセット的なところ(SliverlightはXAMLの3次元表示機能を持たない)があり、表示を書き換えるなどして完全なMetro Styleアプリケーションにすることもできようだ。アプリケーション自体に条件判断を組み込むことで、同一のソースコードから、Metro Style、Sliverlight、Windows Phone 7で動作させるコードが作成できるという。

開発には、Visual Studio 11とExpression Blend 5を利用する。HTML+JavascriptによるMetroStyleアプリケーションもVS11で開発可能で、生成したHTMLコードをExpression Blend 5で加工してMetro Styleらしくさせることも可能だ。デモを見た限り、HTML5+Javascriptで記述したアプリケーションも、実行速度はかなり速い。おそらく、パッケージを作る段階で、中間コードなどに変換しているのではないかと考えられる。IE9に搭載されているJavascriptエンジンChakraでは、ダウンロードしたHTML/Javascriptコードをマルチコアを使ってバックグラウンドでコンパイルして実行を行う。Webブラウザの環境では、ユーザーがページを開くまで、どのようなコードを実行するががわからないので、直前にコンパイルするしかないが、Metro Styleならあらかじめ中間コードなどに変換しておくことは可能だろう。

なお、Metro環境の画面分割でも、片方をWindowsデスクトップとすることができるため、Metro StyleアプリケーションとWindows デスクトップ上の従来アプリケーションを同時に表示させて操作することもできる。ただし、デスクトップを画面分割の小さい側にしてしまうと、ウィンドウは、ウィンドウズ7のタスクバーで表示されるサムネイル表示のような状態になってしまう。

また、Metro Styleアプリーションは、「共有」機能を併用することができ、ブラウザならURL、データを出力しないアプリケーションなら画面キャプチャなどをTwitterやFacebookといったSNSサービスに投稿できる。

また、Windowsデスクトップ内の標準ツールも強化され、Windows Explorerには、リボンインターフェースが搭載されいる。また、ファイルのコピーや移動は、転送速度を表すグラフアニメーションで表示され、複数のコピーを実行した場合の影響などが簡単にわかるようになっている。

また、タスクマネージャも強化されており、CPUやメモリ、ネットワーク状態などが把握しやすくなっているほか、簡易表示にすると、アプリケーションのみが表示され、現在のタスクマネージャの「アプリケーション」タブののみの状態となる。アプリケーションの動作状態に「Suspend」という状態が新設され、バックグラウンドで操作待ちなどで止まっているアプリケーションは、Suspend状態にされ、余計な電力消費を行わないように工夫されている。

また、電源オフは、いわゆるスタンバイ状態となり、最小限の電力で動作し続ける。こうしておくことで、ネットワークからの要求や定期的な処理を常に行えるようになるほか、きわめて短時間でPCを起動することが可能になる。

Windows 8は、Metro Style環境を使えば、従来のWindowsというよりも、AndroidやiOSのタブレットに近い。Windows Liveを使うメールやカレンダー、文書、写真管理、コンタクト管理といったツールが用意され、ファイルや情報はインターネット側にあるために、新規マシンの利用でも、短時間のうちに最低限の利用が可能になる。また、操作感やアプリケーションの感じもAndroid HoneycombタブレットやiPadに近い。しかし、Windows環境もそのまま残っており、既存のPCと同じ使い方も可能だ。