マウスコンピューターが、去る7月30日に、同社飯山工場を会場とした「2011年度親子パソコン組み立て教室」を開催した。夏休みを利用して、親子でパソコンを組み立てるなどし、それらを通してパソコンへの理解を深めようという試みだ。当日の教室におじゃまさせていただくことができたので、その模様をお伝えしたい。

飯山工場で開催された「2011年度親子パソコン組み立て教室」

今年で2回目の開催

日本全国の小学校6年生を対象に、抽選で親子20組の計40名が参加した夏休みイベントで、会場となったのは、長野県・飯山市にあるマウスコンピューターの「飯山工場」。飯山工場そのものについては、こちらの工場見学の記事で詳しくお伝えしたこともあるが、地元密着型の運営も特徴となっている同社の製品生産工場だ。なお、同様の試みは今年で2回目の開催。全国から応募があったということで、当日は遠方から泊りがけで訪れていたという親子の姿もあった。

長野県・飯山市にあるマウスコンピューターの飯山工場

同社代表取締役の小松永門氏によると、前年の第1回開催では、"飯山市"で先端技術を用いた事業であるパソコンの生産を行っているということを、飯山市の地元の子供たちに知ってもらいたいとの思いから、地元の親子のみを対象に実施をしていたのだという。ただその際に、市外・県外からも参加したいとの声が多かったことから、今回は飯山市の地元枠も一部残しつつ、全国から参加を募ることとなった。同小松氏は、教室の開講にあたり、集まった子供たちに、この教室で、「パソコンを好きになって欲しい」「パソコンに詳しくなって、パソコン博士になってほしい」「夏休みのよい思い出をつくってほしい」との思いを語った。

マウスコンピューター代表取締役の小松永門氏

当日はさらに来賓として、飯山市の市長である足立正則氏も駆けつけた。飯山市は自然に恵まれた観光地であるとともに、先端産業であるコンピュータにも注目していることを紹介。飯山工場はいわずもがなだが、例えば飯山市では、ちょうど新幹線が通る計画が進められており、駅施設などのイメージ作成には、3Dレンダリングなどを積極活用していることも紹介していた。ちなみに足立市長、昔からコンピュータへの造詣が相当に深かったようで、現在でも複数台のパソコンを所有しているだけでなく、現在のメインマシンはマウスコンピューター製ノートPCの中でもグラフィックス機能を強化した"いちばんいい"モデルなのだそうだ。

飯山市の市長である足立正則氏

組み立て教室いよいよ開講

今回は、同社の15.6型ノートPC「LuvBook Tシリーズ」をベースに、この日のために用意された特別仕様モデルを組み立てる。主な仕様としては、CPUはSandy Bridge世代のCore i3、メモリは4GB、HDDは500GB、GPUはGeForce GT 540M、DVDスーパーマルチドライブとWindows 7 Home Premiumも導入する。組み立てたあとは各自このノートPCを持ち帰ることができ、教室の参加費が総額3万円であることを考えると、ノートPC代だけ考えてもかなりお得な内容となっている。

今回組み立てる15.6型ノートPC「LuvBook Tシリーズ」(特別モデル)のパーツ類

デスクトップPCに比べると難易度が高いノートPCの組み立てなので、きちんと完成できるのかが不安になるところだが、それを強力にサポートするのが、飯山工場の誇る熟練の組み立て先生達だ。生徒2組につき、普段は飯山工場で製造に携わっている先生が1名、つきっきりでサポートしてくれる。

普段は飯山工場でマウスコンピューターの製品を生産している先生達が、子供達をサポート

なお、教室が学校の授業を模して時間割で区切られており、内容は以下の通り。

  • 1時間目 : 組み立て前の準備をしよう!
  • 2時間目 : パソコンを組み立てよう!
  • 3時間目 : パソコン工場大公開!
  • お昼休み : お昼休み!
  • 4時間目 : パソコン体験講座!

1時間目

1時間目は「組み立て前の準備をしよう!」。組み立て前の下準備の時間だ。組み立て部材には硬く尖ったものなどもあり、怪我防止用の作業用手袋の装着からはじまった。また、パソコンの部品は静電気によって壊れてしまう可能性もあるということで、腕には帯電防止用のリストバンドも装着。ドライバーなど組み立てに使う工具の確認も行った。

なお、今回の教室では、実作業は基本的に子供が担当し、「お父さんお母さんは、アドバイスはいいですが、手を出しちゃ駄目です」と先生からの念押しがあった。そのため、組み立ての練習として、ダミー部材を用いて、ドライバーを使ったネジのまわしかたから、ちょっと難しい半導体チップへの熱伝導グリスの塗り方といったところまで、組み立てに必要な基礎的な作業の練習もしっかり行われた。

本番前に、ダミー部材を用いて、ドライバーの使い方など作業を練習する子供達

また、ただ組み立てるだけでなく、仕組みも理解して欲しいとの趣旨から、パソコンの主要各パーツの解説の授業も行われた。例をあげると、パソコンの動作を"勉強"になぞらえ、実際のパーツを目の前に、CPUは人間で言うと脳にあたり、HDDは教科書が詰まった本棚、メモリは教科書をひろげる机で、データが教科書(読み込み)やノート(書き込み)にあたるという説明は、わかりやすく子供達にも伝わっていたようだった。

パソコンの主要各パーツの解説の授業も

2時間目

2時間目は「パソコンを組み立てよう!」。いよいよ実際の組み立てである。バラバラの各パーツを、ベースとなるノートPCのベアボーンに組み込んでいくわけだが、ノートPCを組み立てたことがある人などは、大人でもそうそう居ないだろうし、さらに前述の通りお父さんお母さんの手出しは厳禁である。はじまってしばらくは、かなりオドオドというか、慎重さ重視の雰囲気の中での作業となっていた。

いよいよ組み立てスタート! まだちょっと緊張気味か?

パソコンなんて本当につくれるかなぁ、と言った感じなのか、心配そうな面持ちで見守るお父さんお母さんも

しかし、これが子供時代特有の学習力の高さなのか、それともサポートする先生の指導が適切なのか、ほとんどの子供は授業進行の中でどんどんコツをつかんで行ったようで、2時間目も後半になってくると、もう次からは一人で全部できるんじゃないのかと言えるほど、サクサクと作業ができるようになっていた。最初は緊張の面持ちだった子供達が、いつしか、先生達とパソコン談義などもしながら、楽しそうな笑顔で堂々と作業しはじめていた様子は、筆者も見ていて非常に印象に残るものだった。

CPUの取り付け作業中。そ~っと向きやピンの位置をあわせて……手が震える瞬間だ

今後はチップにグリスアップして、ヒートシンクも装着

メモリモジュールをスロットに。カチッと音がするまで押し込むのがポイント

ストレージ(HDD)の装着。このあたりまでくると、コツをつかんできたのか殆どの子供達がスムーズに作業しはじめていた

光学ドライブを装着。大分パソコンのかたちになってきて、もうすぐ完成だ

最後にカバーとバッテリをはめて、保護シートを外すと、見た目は完成したような状態にまで

さて、組み立ては時間内に全グループがきちんと完了。見た目は完成品のノートPCになっているが、電源投入は後のお楽しみということで、ひとまず作業はここで終了だ。各ノートPCは、それぞれ担当した先生によって、飯山工場において実際の出荷製品に実施しているものと同じだと言う品質チェックにまわされることとなった。

各ノートPCは先生達がドナドナ。実際の出荷製品に実施しているものと同じだと言う品質チェックにまわされる

3時間目

3時間目は「パソコン工場大公開!」。先生達がノートPCの品質チェックをしている間に、親子で飯山工場の中を見学できるという時間だ。飯山工場の工場長である松本一成氏が案内してくれた。製造ラインをすべて見せてくれただけでなく、筆者らイベント取材に来ていた記者には「見せられない」という謎の部屋の中(本当に見せてもらえなかったので詳細不明)を、教室参加者だけは特別に潜入して見学できたりと、松本氏がサービス精神旺盛な方ということもあり、かなり隅々まで施設を公開してしまって(?)いた。う~ん、うらやましい……。

松本工場長の案内で工場見学。普通では決して見られない場所も見られるとあって、貴重な体験だ

お昼休み

今回の組み立て教室で、個人的なトピックですこぶる申し訳ないのだが、筆者がとても感動したのが、このお昼休みだ。非常に余談なので、組み立て教室の模様のみ読みたい方は、このパートを飛ばしていただけると助かるところである。

さて、何に感動したかというと、参加者全員に用意された「飯山市のおいしいものがたくさん詰まったお弁当」。もし飯山市を訪れる機会があったら、是非食べてみて欲しい。ちょっと凄いのだ。筆者などは、お弁当に書いてあったお店の連絡先を即メモしてしまった。

これが「飯山市のおいしいものがたくさん詰まったお弁当」だっ! 本当においしかったぞっ!

メインは笹寿しとよばれる飯山の名物料理だそうで、まずこれがおいしい。お米がつぶつぶしていて絶妙の甘さでおいしい。おかずも全部おいしく、特に野菜系が普段食べているものとまるで違って感じる。味が濃厚だし、きゅうりの漬物は、漬物なのにとれたてを食べたみたいな味がする。何より、全てがちゃんとしたおいしい"手作り"の味なのだ。

余談の余談だが、おやつの"かりんとう"もおいしかった。これも飯山市の銘菓なのだそうだが、筆者のオススメは「りんごかりんとう」。普通のかりんとうよりもっちりしていて、りんごの香りが口の中にさわやかにひろがるのがたまらなかった。飯山市内でもお店によって味に個性があるそうなので、機会があれば色々なかりんとうを試してみたくなった。(重ね重ね申し訳ないが、あまりのおいしさに、どうしても紹介したかったのだっ!)

飯山市の銘菓というかりんとう。特別に、今回の教室用の袋に入っていたのも楽しかった

4時間目

4時間目は「パソコン体験講座!」。お昼休みもおわって、ついに組み立てたパソコンを起動させてみることから、この4時間目がはじまった。

参加者全員で一斉に電源スイッチを押し、ドキドキしながら起動を待つ数秒間を経て、Windows OSの起動画面が表示された瞬間に、喜びの声があがった。世界に1台だけの、自分で組み立てたノートPCの完成である。

電源オン。全員の組み立てパソコンが無事に立ち上がった

全員のパソコンが無事に完成したということで、4時間目の授業内容は、そのノートPC使ったパソコン実利用の体験講座だ。日本マイクロソフトから特別講師として招かれた池田憲一氏がこの時間の担当先生。Windowsの初期設定から、基本的な使い方、そして応用編でワコム製タブレットを組み合わせた写真データ加工や、動画編集ソフトでのスライドショー作成のハウツーなどが伝授された。

日本マイクロソフトから特別講師として招かれた池田憲一氏。知っているとちょっと自慢できる裏技的ショートカットキーの使い方なども伝授

ワコム製タブレットを組み合わせた写真データ加工や、動画編集ソフトでのスライドショーの作成などもマスター

子供達の笑顔で締めくくった組み立て教室

自らの手で自分だけのノートPCを組み立てることを中心に、パソコン工場の見学もできて、マイクロソフトの先生から直接Windowsの使い方の指導も受けられるなど、充実した内容で実施された「2011年度親子パソコン組み立て教室」。大人目線だとかえがたい体験になったに違いないと思えるが、実際の子供達はどう感じたのか。何人かに聞いてみると、「組み立て、すっごい楽しかった」、「画面が出たときには本当に嬉しかった」、「グリスを塗るのが大変だったけど、上手くできてよかった」など、笑顔で答えてくれていた。

最後はみんなで記念撮影。笑顔の子供が多かったのが嬉しいところ

また、組み立て教室にあわせて、7月30日と同31日の2日間、教室と同じ飯山工場を会場に、同社製品のアウトレット品などを特価販売する「訳ありセール」も開かれていた。製品によっては最大80%オフで購入できるという太っ腹なセールで、こちらも、朝早くから行列ができるなど盛況なイベントとなっていた。教室とあわせて、来年の開催にも期待したいイベントだ。

あわせて開催されていた「訳ありセール」。朝から行列ができるほどの盛況だった