ついに姿を表した「OS X Lion」。約2年ぶりのメジャーアップデートであり、機能強化点は250を越すという。他のOSには見られない革新的な機能も多く、その評価が浸透するまでには時間がかかりそうだ。この短期連載では、そんなLionの"確かに凄いがしくみがわかりにくい"機能をいくつかピックアップし、詳細について解説してみよう。第1回は、再開とオートセーブ、バージョンを取りあげる。

Lionで導入された「再開」は、アプリケーションの状態を自動保存する機構を指す。ユーザはただアプリケーションを終了するだけで、そのとき開いているファイルが次回起動時にそのままの状態で現れる。ファイルに気を使うことなく、いきなりアプリケーションを終了してかまわないのだ。

この「再開」にはCocoa API、正確にはAppKitのうちNSDocumentクラスを使用するアプリケーションが対応している。だからLionに標準装備のテキストエディットやプレビュー、SafariやQuickTime Playerはもちろん、Office for Mac 2011(Word/Excel/PowerPoint)でも、終了時に開いていた文書が次回起動したとき元の状態で現れる。よく使う・次回も使うファイルを開く手間が省ける、という意味で画期的な機能といえる。

「再開」に対応したアプリケーションは、終了時の状態を次回起動時に再現できる(画面はSafari)

もう1つ、NSDocumentクラスには「オートセーブ」が追加された。その名のとおり文書を自動保存するこの新機能は、ユーザに文書の保存を強いることなく、不意な操作で内容を失う危険を取り去った。前述した「再開」との組み合わせにより、「文書=ファイル」という概念が薄まり、アプリケーションウインドウに見えるデータが文書そのもの、という状況を創り出すことに成功している。なお、データの保存はバックグラウンドで処理されるため、書き込みが遅いためにアプリケーションの反応がなくなることはない。

編集中の文書は「オートセーブ」により自動保存される。新規作成された文書も例外ではない(画面はテキストエディット)

「バージョン」は、この2つの新機能に時間軸を与えるものだ。ユーザが文書を保存する操作を行うたび、その内容は一意の"バージョン"としてファイルシステム上に記録される。テキストエディットのファイルメニューにこれまであった「保存」(Command-S)が「バージョンを保存」に代わり、「上書き保存」がなくなったことは、この"バージョン"の出現による。

バージョンとして保存された時点の状態へ自由に戻すことができる「バージョン」

よって、Lionで動作する全アプリケーションがこれらの機構に対応しているわけではない。App KitのNSDocumentクラスに新設された関数を使用するものでなければならず、結果的に「プレビュー」や「テキストエディット」、あるいはLion発売直後にアップデータが公開された「iWork」でなければ、再開/オートセーブ/バージョンはフル活用できない。「再開」のみOffice for Mac 2011などサードパーティ製ソフトでの動作を確認しているが、パレット類の表示やカーソル位置など細かい情報は記録されないため、新設の関数を使用しないかぎり「再開」本来の働きは発揮されない。

Word 2011は「再開」に一部対応しているが、開かれていた文書が次回の起動時に開かれるだけで、オートセーブとバージョンには対応しない