カシオ計算機の新しいコンパクトデジカメとして「EXILIM EX-TR100」(以下、EX-TR100)が登場した。レンズに21mm相当の広角単焦点を、撮像素子に1210万画素CMOSを搭載した薄型モデルだ。新しい撮影スタイルが楽しめる意欲作で、さっそくレビューをお伝えしよう。なお、今回は評価機を試用しているため、画面表示などが製品版とは一部異なることをお断りしておく。
2軸回転スタイルの薄型ボディ
EX-TR100の一番の特長は、誰もが戸惑うくらい斬新なデザインだ。初めて見て、これがデジカメだとすぐに分かる人は少ないかもしれない。前面にレンズを、背面に液晶モニタを配置し、操作ボタンはわずか2つのみ。新しいスマートフォンだと勘違いしてもおかしくない。
大きさは男性の手のひらに隠れるくらい小さく、胸ポケットに入れても苦にならないくらい薄くて軽い。それでいて各部の作りはしっかりとしていて、外装には適度な剛性感と高品位な質感がある。背面に2つあるボタンのうち、小さいほうのボタンを押すと、約2秒で起動し、液晶モニタが表示される。
そして、もう1つの大きいほうのボタンを押すと「カシャーン」という擬似シャッター音が響き、撮影が行われる。この時点で、これがスマートフォンではなくデジカメであることがはっきりするが、デザインも操作方法も、これまでの一般的なコンパクトデジカメとはまるで異なる。
ボディの外側にあるフレームを押すと、レンズ部分を軸としてフレームが左右に360度回転する。さらに、レンズの横にある液晶モニタは上下方向に270度回転する。この回転構造は「スイバル」と呼ばれるレンズ回転機構を備えたデジカメを彷彿とさせるが、使い勝手は同じとはいえない。従来のスイバル機構のデジカメはレンズが回転するものの、右手でボディを支えて人差し指でシャッターを押すスタイルは、通常のデジカメと変わりなかった。ところが、このEX-TR100は2つの軸によって、ボディの形がさまざまに変化する。
カメラというよりは、ルービックキューブのような立体パズルを触っている感覚だ。グリップと呼べるものはなく、シャッターボタンの位置も特殊なので、一般的なカメラの構え方で撮ることは難しい。
では、どうやって構えたらいいのか。両手で構える場合は、90度開けたフレームを左手で支え、液晶の端に右手を添えるように持つのが便利だと思う。液晶モニタ上の各種の情報表示はカメラの向きに応じて自動的に回転するので、全体を逆さにして右手でフレームを持ち、左手でシャッターボタンを押すのもいいだろう。片手なら、フレームを閉じた状態で携帯電話のように縦に構え、親指でシャッターを押すスタイルがしっくりくる。
フレームを180度開いた状態でレンズを撮影者側に向けた場合は、自分撮りがしやすいスタイルになる。また、フレームによってボディを支え、カメラを自立させることもできる。三脚穴がないので三脚への装着はできないが、フレーム自体が三脚の代用になるのだ。構え方に正解はなく、シーンに応じて撮影スタイルを自由に選べることが、この独特のデザインのメリットといえる。……次ページ「タッチパネル液晶で快適操作」