ビューン社長の蓮実一隆氏

ソフトバンクの子会社が運営する「ビューン」は、iPadの日本上陸とともに、鳴り物入りで登場した。絶妙なタイミングで投入されたこともあり、開始当初にアクセスが殺到。あまりにも注目度が高かったため、サービスを一時的に休止していたほどだ。ビューンの特徴は、雑誌や新聞といったコンテンツ(の一部)が一堂に介していること。iPadなら30日450円、iPhoneやiPod Touchなら30日350円で利用できる。10月には、ソフトバンクの3Gケータイにも対応した。こちらの料金は、月額315円だ。

では、ビューンはどのような目的で立ち上げられたサービスなのか。また、今後はどのような方向を目指しているのか。これらの疑問を、ビューンの代表取締役社長、蓮実一隆氏にぶつけた。

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ビューンは、ソフトバンクが自ら電子書籍サービスを立ち上げたというより、「メディアのみなさんと、どうアライアンスを作っていくのか」に主眼が置かれている。蓮実氏は、その理由を次のように語る。

「あまたある広告モデルのものを否定するわけではありませんが、一方で優良なものを素晴らしいデバイスで、お金を払って見るという人は必ずいます。ただ、現状ではそれが上手くっていない。それが劇的に変わり始めているのが、今ということです。ひとつはiPadなどのデバイスが登場したため、もうひとつはメディア側の経済状況が確実に変化しているためです。近いうちに優良な情報を有料でガンガン使える時代が間違いなくきます。そこに備えるというのが、ビューンを立ち上げた時の大元の発想です」

とは言え、支払う金額にはやはり限界がある。蓮実氏も「先に値段があった。皆さん、1つのコンテンツにはなかなか3000円や4000円は払わない」と認める。だからこそ、ビューンはまず枠組みを作り、そこに様々なメディアが参画できる形を採用した。ユーザーが支払った料金は、メディア側とレベニューシェアする格好だ。これだけの新聞や雑誌がパックになったことを考えると費用対効果が合わないようにも思えるが、「これから広がるデバイスの中で、ビューンが伸びる可能性を感じてもらい、そこに乗ってもらった」というように、メディア側も、短期的に儲けを出すというより、先行投資的な意識でコンテンツを提供していることが伺える。一方で、「どこかと組んで分かりやすく媒体数を増やすというより、13社とお話をしてあえて裾野は広げた」というのが、ビューン側の狙いだ。結果として、ビューンには、朝日新聞、毎日新聞、講談社、小学館、プレジデント……と枚挙に暇がないほどの”大手メディア”がラインナップされている。