Tunnel Creek

IDF2日目のDouglas Davis氏(Photo22)の基調講演の中で出てきたのが、この製品である。氏の基調講演そのものは昨年11月のET2009における講演と大きくは変わらない。中国という場所柄に配慮してか、IndustrialというよりはCommunicationとAutomotiveに力点を置いた内容となっているほか、採用事例は当然中国における企業のもので、またエンターテイメント(平たく言えばパチンコ/パチスロ)の話は消えていたが、それを除けばほぼ同じ内容である。ただし、講演の最後に差し掛かったところで新しいTunnel Creekが突如登場した(Phot23)。

Photo22: Douglas L. Davis氏(Vice President, Intel Architecture Group, General Manager, Embedded and Communications Group)。右手に持つのがTunnel Creek。

Photo23: こちらのPhoto10にあるキャプションと同じ様に、パッケージが22mm角と仮定するとダイサイズは概ね12.3mm×9.7mmで119.3平方mmとなる。PineViewと比較しても35平方mmほどダイサイズが増えているが、これだけ機能を統合すればまぁ仕方ないところだろう。

Tunnel CreekとはPhoto24の様にCPUとMemory Controller、Graphics/Videoなどを全て集約し、外部I/FにPCIe x4レーンを搭載した製品である。Davis氏はTunnel Creekを"Intelとしては初めてEmbedded向けに製造したAtomベースのSoCだ"と表現し、また"Open SoC Platform"と称したが、このOpenなる意味を示すのはこちら(Photo25)である。Tunnel CreekはQueens Bay Platformでサポートされ、またこれをサポートするために専用のIOHもIntelから提供されるが、必ずしもこのIOHを使わなくてもシステムが構成できる点がポイントになる。既にあるPCI Expressデバイスをそのまま接続しても良いし、IOHに相当するような別のHubをASICで起こしたり、あるいはFPGAを繋げることも可能である。従来はIntelのSCHを経由して接続する形態になっていたので、ここで1チップ分を節約できることになる。

Photo24: 他にLPCバスも内蔵するため、ここにFlashをつけ、メモリをつなげればそれだけでCPUは動作することになる。その意味ではIntel初の「汎用」ワンチップPCとも言える。

Photo25: 新規のIOHの代わりにPCIe Switchをつなげ、その先にPCIe Deviceを繋げるという構成もありそうだ。

これにより、特定用途向けの製品が構成しやすくなった。Photo26はあくまで例という事だが、こうした独自チップをサードベンダーが開発した場合でも、

・不要な機能が盛り込まれないので小型化しやすい
・CPUともPCIeで繋げているので、CPUの世代が変わっても継続して利用できる

といったメリットがあるとしている。

Photo26: もっとも、こうした様々なIOHを流通させるといった取り組みにはIntelは興味なさそうだ。少なくともそうした働きかけに関する言及は、講演の中ではなかった。