写真のデジタルデータやイラスト、音楽、動画といったデジタルコンテンツを、クリエイターや報道関係者など、世界中の様々な人々にwebで提供しているゲッティ イメージズ。近年は、ゲッティ イメージズの様々なWebサービスとして用意されたコンテンツを自身のアウトプットに利用するというだけでなく、自分自身の作品を素材としてゲッティ イメージズを経由して提供、その販売・使用ロイヤリティを生活の糧にするというクリエイターも増えてきている。

単にクリエイターに素材を提供し、創作・制作をサポートするという既存のサービスだけでなく、クリエイターの仕事の機会創出の場としても機能するゲッティ イメージズの様々なサービスのあり方について、前回に続き、ゲッティ イメージズ日本支社の代表取締役を務める島本久美子氏に話を訊いた。

素材写真にもトレンドが存在する。

クリエイター向けの素材提供について語る島本氏

――報道でそのまま使われる完成された写真とは違う、クリエイティブの素材として利用される写真も、御社は数多く提供されています。そういった素材としての写真にも、トレンドのようなものはあるのでしょうか?

島本久美子氏(以下、島本氏)「はい、やはり流行はありますね。最近の需要としては、クラフトワーク関係、例えば編み物をしているような写真が人気を集めています。また、田舎風の場面やナチュラルフード関連の写真なども人気です」

――プロカメラマン以外の写真が人気を集めるような事もあるのでしょうか?

島本氏「もちろんあります。プロのカメラマンでなくても、日ごろから広告などクリエイティブな仕事に関係している人が撮る写真はよく売れます。リアルというか、普通の写真に関しては、プロでない方の写真が人気を集めるという事も多いです。例えばプロでは撮影できないような、普通の家族の風景などが人気を集めています。それらを集めた弊社のサービスがフリッカーコレクションです。写真をシェアするサイトに、一般の方が写真を投稿して、採用されるとグローバルに販売されます。プロの写真はもちろん素晴らしいのですが、お客様のニーズも最近は幅広くなってきていると感じますね」

――御社も出品者も常に、トレンドというかニーズを意識して写真を用意しているのでしょうか?

島本氏「どういう物が売れているかを知るために、弊社ではクリエイティブリサーチを頻繁にしています。例えば、弊社の検索システムで検索結果がゼロのものは、ニーズがあるのに商品がないということです。それを常にリサーチして提携カメラマンにも『トレンド情報』を送っています。常にトレンドがあり、同じテーマでも古い写真は売れなくなってきます」

――同じテーマでも売れない古い写真があるとのことですが、具体例を訊かせてください。

島本氏「例えば環境ですが、昔は環境といえば緑や自然の写真が売れましたが、最近は環境だと、やや自然が破壊されているような写真がよく売れるという傾向があります」

――御社の世界中に自分の作品を売れるという部分に関して、日本のクリエイターやセミプロに方々にもビジネスチャンスはあると思われますか。

島本氏「そうですね、クリエイティブの世界に関して、皆さんがグローバルにビジネスを展開しようというときに、言語の事を問題にされます。ですが、例えば概念的な言葉を表現する写真の場合だとどうでしょうか? 『発展』とか『協力』という言葉を写真で表現したとき、言語とは関係なく様々なイメージが浮かぶはずです。こういう概念的なものを言語化したイメージ写真は、流行や言語と関係なく常に売れています。ですから、日本人にも大きなチャンスがあると思います」

クリエイターにとっての活用法

――御社の素材を利用するクリエイターにとって、御社と他の素材提供サービスとの、大きな違いは何なのでしょうか?

島本氏「まず素材の数も種類も圧倒的に他社より多いという部分があります。とにかく、クリエイターの方々には、ただ素材として弊社の作品を購入して使う以外の利用法も試してみて欲しいですね」

――「購入して使う」以外の利用法とは、具体的にどういうことですか?

島本氏「素材を買わなくても、観て参考にしていただくという部分ですね。アイデア、インスピレーションのために弊社のサイトを観ていただくだけでもいいと思います。そのためのビジュアル検索ツール『Catalyst(カタリスト)』も非常に直感的で使い易いものとなっています。検索キーワードを入れた後は、素材写真が関連ワードによって視覚的・地図的に表示されていて、直感的に探し観ることができます。また、この検索エンジンで興味深いのが、例えば"可愛い"という言葉で検索したとき、言葉は同じでも、国ごとやクリエイターごとに捉え方が違うので、まったく出てくる写真が違うという部分ですね。これを観るだけでも、多くのインスピレーションを得られると思います」

ビジュアル検索ツール『Catalyst(カタリスト)』

ゲッティ イメージズのビジュアル検索ツール『Catalyst』。入力したキーワードに関連した写真を、そのワードのニュアンスに近い写真か遠い写真か判断し、地図のように視覚的に表示。直感的、視覚的に検索可能なサービスだ。画像左から、「cute」、「japan」、「lifestyle」というキーワードで検索している様子

島本氏「観てインスピレーションを得るという以外ですと、例えば、実際のアウトプットで利用しなくて、カンプ(※)として利用するという場合でも、より低額な料金で素材をライセンスしています。こうした使い方をしていただくことで、より弊社の良さを感じていただけると思います。言葉だけではクライアントにアイデアや企画の良さを伝えられないときも、弊社のサービスを活用して役立てていただけたらありがたですね」

(※Comprehensive Layoutの略。広告制作や印刷などの仕上がりを具体的に示すための見本)

――御社はThinkstockで1日25点まで素材を使い放題という定額制の新サービスもスタートさせました。

島本氏「これはプロのクリエイターでなくても、見栄えの良い写真をwebで手軽に活用したいという方向けのサービスです。『これまでは、Webページに文章だけだったが、クオリティの高い写真も入れたい』というような方には、最適のサービスです」

――最後に、御社のこれからの取り組みに関して聞かせてください。

島本氏「これまで以上に様々なサービスを用意して、クリエイターや一般の方の多様なニーズに応えていきたいですね。素材を購入する方も、作品を出品される方も、弊社サービスを利用して、それぞれのクリエイティブに役立てていただけたら、嬉しいです。また、素材の版権問題に関するユーザーのための対応も、弊社の強みだと思っています。Webの世界ではフリー素材が多いですが、フリー素材を利用した結果、トラブルになるケースもあります。そういう意味でフリー素材を使うにはそれなりのリスクもあると思います。そのようなリスクを回避するために新サービスのThinkstockでは、安心してご利用頂くために、法的保証も兼ね備えています」

※版権トラブルが生じたとき、1点ごとに1万米ドルまで(Thinkstock、iStockphotoのみ)ゲッティ イメージズがサポートする。関連記事はこちら。

ゲッティ イメージズ 島本久美子
2歳~12歳までニューヨーク在住、神戸大学経済学部卒業。大阪ガスに勤務後、1997年に渡英。オフィシャルF1ゲームを開発するゲーム会社をマンチェスターに設立。2001年、英国image.net Ltd.に入社。日本においてimage.netを立ち上げ、image.netのGlobal SalesDirectorに就任。image.net、Getty Images統合後、ゲッティ イメージズのヨーロッパの報道部門の営業総責任者の経験を得て、2009年4月、日本支社の代表取締役に就任。現在、日本、オーストラリアの営業総責任者を勤める。ゲッティ イメージズ ヴァイスプレジデント兼ゲッティ イメージズ ジャパン 代表取締役。インターネットビジネス、著作権ビジネス、および、PRや報道の仕組みに精通した経験を生かし、2010年には産経新聞、朝日新聞などの日本のコンテンツプロバイダーとのパートナー契約も締結する

撮影:中村浩二