米Apple CEOのSteve Jobs氏。伝記がiPadで読めるよう、電子書籍ストア「iBookstore」で発売される可能性はあるだろうか(写真:Yoichi Yamashita)

これまで何人もの作家が米Apple CEOのSteve Jobs氏の伝記を執筆してきたが、それらはすべて1つの大事なピースが欠けていた。そう、Jobs氏本人の協力だ。だが米New York Timesの16日(現地時間)の報道によれば、現在同氏の協力である作家がJobs氏のこれまでの人生を綴った伝記の執筆に取りかかっているという。

この作家の名はWalter Isaacson氏。世界や政治問題などを研究する非営利組織の米Aspen InstituteでCEO兼プレジデントの職にある。同氏は一貫してジャーナリズムの道を歩んできた人物で、過去には米TIME誌のマネージングエディターのほか、米CNNの会長兼CEOを歴任していたこともある。現在はAspen Instituteでの活動の他、米オバマ大統領の指名で米国の独立系広報組織であるBroadcasting Board of Governors(BBG)の会長に選ばれている。Isaacson氏は執筆活動でも知られており、近年では「American Sketches: Great Leaders, Creative Thinkers, and Heroes of a Hurricane」「Einstein: His Life and Universe」「Benjamin Franklin: An American Life」といった歴史上の偉人の伝記やエッセイなどがベストセラーになっている。

そんな、そうそうたる経歴を持つ同氏が次の執筆テーマとして選んだのが、シリコンバレー伝説の1つとなったJobs氏の人生録だ。NYTが関係者2名の証言として紹介しており、現在はまだ計画の初期段階にあるというものの、Isaacson氏はJobs氏の協力を受けて執筆を行う予定だという。現在シリコンバレーと呼ばれている土地でJobs氏が過ごした若き日の話から、現在のAppleに至るまでがカバーされることになるという。しかもJobs氏が子供時代に過ごした家までIsaacson氏を招待するという念の入ったもので、2人が共同で伝記を執筆しているといった様相だ。

Jobs氏がここまでIsaacson氏の執筆活動に入れ込む理由の1つとして考えられるのが、こうした同氏の協力なしに執筆された伝記の数々だ。これら一部の書籍についてJobs氏は非常に怒りを感じており、問題となった書籍を出版した会社の別の書籍をApple Storeの棚から一時的にすべて撤去させるという指示を行ったこともあるという。またNYTでは、Jobs氏が最近の健康状態を顧みて、その遺産を形にしたかったと考えた可能性があるとも指摘している。いずれにせよ、Jobs氏が全面協力した人生録がどのような形でまとめられることになるのか、興味を抱く読者は多くいるはずだ。