国内でNTTドコモから販売が行われているBlackBerry Boldだが、米国を中心に海外では、コミュニケーションに特化した携帯電話としてある程度のシェアをもつ。また、Javaなどによりソフトウェア開発が可能となっている。今回筆者は、11月9日から12日まで米国・サンフランシスコ市で開催された開発者会議に出席したので、BlackBerryの概要をおさらいしつつ、開発者会議で発表された今後の方向性についてお伝えする。
BlackBerryとは?
BlackBerryは、ハードウェアとしては、3G(W-CDMA)に対応した携帯電話だが、専用のコミュニケーションネットワークを持ち、ユーザーはBlackBerry Internet Service(BIS)か、BlackBerry Enterprise Service(BES)のどちらかを契約して利用する。後者は、組織内などに専用サーバーを構築し社内のシステムと接続してつかうもので、基本的に企業むけのもの。これに対してBISは、個人で契約でき、専用のメールシステムなどが利用できる。通常、ドコモが発売しているBlackBerryを店頭で購入する場合には、このBISに別途加入する。
BlackBerryとよばれる端末は複数あるのだが、現在国内ではBoldとよばれる機種と、その前にドコモが企業向けに販売していた8707hしか販売されていない。BlackBerryは独自のオペレーティングシステム(BlackBerry Device Softwareなどとよばれる)を持ち、Javaによりアプリケーション開発が可能だ。
現在NTTドコモから発売されている「docomo PRO series BlackBerry Bold」 |
企業向けに販売していた「BlackBerry 8707h」。2008年8月から個人向けにも提供した |
加えて、BISなどの専用ネットワークと、BlackBerry Softwareが連携してBlackBerryを作り上げている。というのは、BlackBerryは、もともと、低速な双方向ページャーや2Gのネットワーク上で、PC同様の本格的なメールシステムを構築しており、最近の携帯電話なら端末上で実行するような1部の処理をBISなどのサーバー側で実現している。
たとえばメールは、BISのサーバー側から最初ヘッダ部分などを含む先頭の3キロバイトだけが転送され、ユーザーがメールを表示してスクロールしていくと、残り部分のダンウロードがはじまるといった具合である。また、Webブラウザなども、サーバー経由でいったん処理し、端末にあわせて加工したデータを送るようになっている。
BlackBerry一番のメリットは、メールを中心にした"使い勝手"だ。長くメールによるコミュニケーションに関わってきたBlackBerryでは、小さな端末で大量のメールを扱うことができ、多数のメールから目的のメールを簡単に探したり、本体正面にあるフルキーボードで長文のメールの作成が簡単に行える。仕事で大量のメールを扱わねばならないのであれば、BlackBerryは他の端末よりも断然使いやすい。
選択中のメールの差出人や同じタイトル(もちろん返信のためのReなどは無視して)などで検索が行われるし、メールは日付単位で表示を送ることができる。こうした操作を、本体全面のキーボードで簡単にできるため、片手で操作しながら、大量のメールを扱うことが可能になっている。ただ、このあたり、実際に使ってみないとわからない部分がある。このため、国内では大きな話題になりにくいのだが、使い始めると、iPhoneやAndroid、Windows Mobileなどのメールにはもどることができなくなってしまう。
また、PDFやOffice文書などの閲覧も可能で、Office文書に関しては、編集も可能だ。メッセンジャーは、BlackBerryユーザー間で簡単に使える専用のものと、Windows LiveやYahoo!(ただし米国方式)、Googleのメッセンジャーが利用できる。最近では、FaceBookなどのSNS専用のアプリケーションも提供されている。
高性能化するスマートフォンに対応
低速なネットワークと、あまり性能の高くないCPUしかない時代に、現在のスマートフォンが可能な処理を実現していたBlackBerryだが、米国でも3Gネットワークが構築され、高速で低消費電力のプロセッサが開発されると、そのメリットが見えにくくなってきた。
これに対抗するように米国などで登場したのがBlackBerry Device Software v5.0(以下v5.0と略す)を搭載したBold2(正式にはBold 9700)と、キーボードを廃し、全面タッチパネルとしたStorm2だ。
v5.0では、Webブラウザが強化され、JavaScriptなどの実行効率が向上した。もともとBlackBerryのブラウザはモバイル用としては強力なほうで、かなりのサイトに対応できるのだが、JavaScriptやCSSを多用するサイトには対応できない部分があった。このあたりは、iPhoneやAndroidが使うWebKit系のブラウザが高い性能を発揮している。
またv5.0では、Javaによるアプリケーション開発に加え、HTMLとJavaScriptによるBlackBerry Widgtesによるソフトウェア開発が可能になった。このWidgetsに対しては、Java同等のAPI(オブジェクト)が提供されており、高度なアプリケーションの開発が可能になっている。