夏休みはもちろん、秋の散策にも。自然観察の味方となる「フィールド・ノート」

FileMakerが単なるデータベース作成ソフトではなく、アイデアと使い方によっては様々な機能を織り込んだシステムへと昇華させることもできる。ファイルメーカー選手権では、そのような作品も過去にたくさん応募されてきた。本稿で紹介する「フィールド・ノート」(作者:エゾモモンガさん)は、非常にシンプルかつ基本的な機能が押さえられている作品である。FileMaker初心者がデータベースというものを勉強する、カスタマイズしていくうえで有用なテンプレートとなっている。では、早速「フィールド・ノート」のレビューを行っていくことにしよう。

FileMaker傑作テンプレート紹介

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自然観察での記録を"野外手帳"から"FileMaker"へ

この「フィールド・ノート」は、タイトルからも想像が付くように植物観察や野鳥観察、里山に棲む昆虫の観察などを行う時に利用するテンプレートとなっている。サンプルは「バード・ウォッチング」を主眼に据えており、「季節が移り変わったせいか鴨の姿が少ないな」「北方からの渡り鳥の姿がちらほら増えてきたな」と、観察をしていて思ったこと、感じたこと、その日の天候や観察を行った時間帯などを記録する形式となっている。それまで手帳やノートに纏めていた情報を、

FileMakerのデータベース機能を利用することによって整理しつつ、いつでも検索することができるよう工夫されている。さらに、過去に蓄積してきたデータをより活用のしやすい形式にするために、別途Excelファイルへの出力をサポートしたテンプレートも用意されているのがうれしい。作者は、よくFileMakerを理解しているという印象を受けた。

「フィールド・ノート」の基本画面がこちら。「何処で」「何時」「どんな条件下で」観察したかといった基本情報から、観察メモや観察地に生息する動植物を記録することができる

データベースとして機能しているおかげで、手書きのメモやノートをめくり必要な情報を探し出す手間を[種名検索]などによって簡便化されている。また、[種名検索]時には、簡単な野鳥の生態情報を表示するという小技が利いている

別途用意された[Excel作成]テンプレートを利用することによって、統計を採る際にグラフ化、数値化がしやすいExcelファイルへと書き出すことも可能だ

PDFファイルへの書き出しにも対応。汎用性の高いファイル形式への変換が行えるのは利用者にとって役立つこと請け合いだ

また、観察したスポットの情報はもちろん、観察時に遭遇した野生生物の姿を写真に収められた場合にはデータベースに画像を登録することができるほか、鳥のさえずりや鳴き声なども音声データとして登録しておくことが可能だ。

そして、「種名の検索」時に簡単な生態情報を確認できるよう、生態情報のテーブルが用意されていることにも注目したい。野鳥の生態データベースと実際に観察した情報を照らし合わせることによって、新しい発見が生まれるかもしれない。そういった使い方、楽しみ方ができるテンプレートだ。

難しい機能や複雑なリレーショナルデータベースの活用は行われていないが、基本的なデータベースとしての機能は十分に備わっているテンプレートと言えるだろう。ダウンロードデータに含まれている[マニュアル]に記された作者のエゾモモンガさんのコメントにも、「難しい機能は使っていないので、他の目的、例えば植物観察、昆虫採集などのために簡単に作りかえることができます。ただ単に、遊びにどこかへ出かけた時の思い出記録用に使っても良いと思います」と使い方のアドバイスやカスタマイズのヒントが提示されている。

例えば、入力時の手間を簡便化するためにWebサービスとの連携を強化して観察地のデータをGoogleマップから自動に導き出す、観察中に出会った動植物や昆虫などのデータをWikipediaから参照するなど、より使い勝手の良いものへと進化させる土台として活用することも十二分に考えられる。

観察時に自らが撮影した写真データを登録することも可能。また、録音機材の用意があった場合、鳥類の鳴き声などの音声データも登録することができる

観察した地点の情報を登録することも。惜しむらくは、自らで地図となる画像を用意せねばならないところ。もう一歩踏み込んで、GoogleマップなどのWebサービスから自動で観察地点を登録することができるとより洗練されたテンプレートへと進化するだろう

また、野外での利用という点においては、FileMakerの弟分的存在のBentoとの連携を図り「Bento for iPhone and iPod touch」アプリで手帳やノートへの記述ではなく、iPhoneを用いてその場でデータベースに登録していく、という使い方も想像に難くない。そういった意味において、この「フィールド・ノート」はFileMaker初心者にとって最良の教材となり得るのではないだろうか。

野外観察というシチュエーションなら、一度ペーパーに書くよりも「Bento for iPhone and iPod touch」を用いてダイレクトにデータベースへ入力、最終的なデータ管理をFileMaker行う。そんな利用方法も考えられるだろう

新たな技術との組み合わせによって可能性は無限大に!

本稿でレビューした「フィールド・ノート」は、FileMakerというデータベースソフトウェアの基本的な機能を活用したテンプレートだ。本稿で例を挙げたように、FileMakerの様々な活用シーンを考えていくうえで応用が利く作りとなっている。前回、前々回に紹介した作品はひとつの完成したソリューションにまで昇華されたテンプレートだったが、初めてデータベースに挑戦してみるという方には「フィールド・ノート」は大変参考になる素晴らしいテンプレートと言えるだろう。

基礎がしっかりと押さえられているから、それをベースに新たなアイデアを盛り込み自分流にアレンジしていくことができる。「第10回マイコミジャーナル ファイルメーカー選手権」で初めてFileMakerを使ったデータベースシステムにチャレンジしてみようと考えている方々は、この「フィールド・ノート」を実際にダウンロードして触れてみた感触を参考にさらなる"発想"で応募してみては如何だろうか。