ツアー2日目。頂上でご来光を眺めるため、23時30分起床。広間に集合し、高度計などを調整する。

牛山「PROTREKの高度計は圧力センサーを利用しています。従って、同じ場所にいても、気圧配置が変われば高度が変わってしまうことがあります。ですから、登山口だけではなく、登山中もこまめに高度計を調整してください。そうすることで、より正確な計測ができるようになるのです」

ということで、高度を2,910mに設定。また、時計本体を傾けるだけでバックライトが点灯する「オートライト機能」をセット。真っ暗な中を歩く夜間登山にはうれしい機能だ。 さて、準備も万端。いよいよ出発だと気合を入れてバックを背負ったとき、天気の状況を見るために一足先に小屋の外に出ていた牛山さんが戻ってきて、「風が強いので天気待ちしましょう」と言う。たしかに外に出てみると強風が吹き荒れ、頂上を目指せるような状態ではない。小屋の人曰く「八合目から上は風速20mぐらい。小石が飛んだりして、危険な状態」とのこと。う~ん、残念。でも、仕方がないので、ご来光の時間まで二度寝することに。

「デイライトグラフ」では、右側のグラフィックが日の出時刻を表し、左側のグラフィックが日の入時刻を表している。また現在時刻のグラフィックは点滅しながら時計回りに移動し、日の出直前の現在は日の出時刻のグラフィックとほぼ重なっている

午前4時15分。小屋の人の声で起こされ、小屋の外に出てみると、すでに東の空がオレンジ色に輝きはじめているではないか! 眺めていると、刻一刻と空の色と明るさが変化しているのが分かる。PRX-2000Tを日の出・日の入時間表示に切り替えると、もうまもなく日の出を迎えることがひと目で分かる。

午前4時40分。真っ赤な太陽が雲の上に顔を出す。はじめは頭のてっぺんだけ。それが徐々にまん丸の太陽になっていく。周りにいるすべての人がじっと同じ方向を眺めている。「ご来光ってLEDランプみたいですね」と日高さん。狙って言っているのかどうか分からないが、例えがやはりIT系ライターっぽい。

山中湖の向こうの空から昇る真っ赤なご来光。富士登山のハイライトのひとつ

いよいよ頂上へ!

風はまだ残っているものの、数時間前に比べれば収まってきたので、午前5時頂上を目指して出発することにする。八合目から標高3,000mを超える。高度の影響が体に出てくるため、前日以上にペースは上がらない。息苦しさ、だるさ、頭痛などが襲ってくる。先頭を歩く人と後ろを歩く人の間が徐々に広くなる。

八合目 太子館前にて。標高3,100m

ここに来て、まったく予想外なことがひとつあった。日高さんが元気なのだ! たしかに表情には疲れの色が見えるし、体重47キロと超軽量級ボディのためときどき風にあおられてフラフラしているが、参加者10名のうち、前から数えて3番目の位置でずっと歩き続けている。

九合目から上の最後の急登を黙々と登る。ここが一番キツいところ

九合目付近、標高3,500mを超えると、さすがに「少し動悸が激しいような気がします……」と苦しそうに訴え、僕がカメラを向けて「笑顔、ください!」と言ってもノーリアクションとなるが、登るペースは落ちない。結局そのまま登りきり、東洋館出発から約3時間後の午前8時10分、吉田口頂上に到着する。

吉田口頂上の久須志神社前にて。満面の笑顔です

気圧計を見ると、650hPaと表示

気圧計をチェックすると650hPaと表示している。地上の気圧が1,000hPa前後だと考えると、空気濃度は約2/3ぐらいか。そりゃ苦しいわけだ。

その後、後続のメンバーと合流して、お鉢をまわって剣ヶ峰を目指すことに。お鉢は高低差のほとんどない平坦な道だが、空気が薄いせいか、みんな苦しそう。剣ヶ峰の直下、馬ノ背の急斜面を息も絶え絶えに登りきると、そこが日本一高い3,776mの山頂だった。

正面の一番高いところが剣ヶ峰。火口にはまだ雪がたくさん残っていた

標高3,776mの剣ヶ峰で高度計をチェックすると「3,705m」と表示が!? 誤差の理由は、本文中の牛山さんの解説の通り。高度が分かるポイントがあったら、こまめに高度合わせすることをお忘れなく!

そこはまさに360度の大パノラマの世界。静岡側に目を向ければ太平洋が広がり、伊豆半島が海に向かってググッと延びている。南アルプスや八ヶ岳などの山並みも見渡せる。風景がどこまでもどこまでも広がり、「地球って丸いんだな」としみじみ実感。

山頂に着いたところで、ふたたび高度計をチェック。すると表示は「3,705m」……あれ、70mほど足りないぞ!?

牛山「七合目の山小屋で高度合わせをしてから、約5時間の出発待ちの間に気圧配置が変わってしまったために誤差が出てしまったのでしょう」

言われてみれば、出発直前や登っている途中は一度も高度合わせをしなかったような……。仕方がないから、手動で「3,775m」に高度を合わせ、記念撮影をする。「PROTREKの高度計には自動記録機能がついていて、一番標高の高い場所に立ったときの時間と高度が自動的に記録されるんですよ」と牛山さんが教えてくれた。「日本にいる限りは、これより高い場所まで登っていけないわけですから、ちょっとした記念になりますね」と日高さんも満足げだ。

富士宮口頂上の富士山頂郵便局ではがきを投函する日高さん。「誰に出したんですか? カノジョですか?」と聞くと、「秘密です」とニヤリ

今回、PROTREK「PRX-2000T」とともに登ったことで、高度や方位、日の出・日の入時間にもより意識的になれたように思う。富士登山の場合、黙々と頂上を目指してしまいがちだが、いろいろな情報を知ることで山の楽しみ方は広がる。

「日本人なら一生に一度は富士山へ」。よく言われる言葉だが、僕自身もそう思う。富士山には、富士山でしか出会えない景色と感動がある。そして下山したあと、高速道路や新幹線から、またオフィスの窓から、遠くに富士山が見えたとき、「あぁ、あの頂上に立っていたんだ」と何年たっても感動のフラッシュバックができるステキな山なのだ。そして、もし富士山に登るなら、ぜひPROTREKをご一緒に。「MAX3,775m」のメモリーは最高の記念になること間違いなし!

中には「体力が不安で…」という人がいるかもしれない。でも、ご安心を。だって、日ごろまったく運動とは無縁の色白ライター日高さんでも登頂できたのだから、万全の準備を整えればあなたもきっと登頂できるはず。

五合目に無事下山。気が抜けたのか、完全にダウンしています