アウトドア・ギアにおけるナショナルブランドである「PROTREK」、このPROTREKの最高峰モデル「PRX-2000T」は、クライマー自らが開発したといっても過言ではない、究極のフィールド・ウオッチだ。

PROTREKシリーズは、日本人初となる8,000m峰14座完全登頂を目指している登山家の竹内洋岳さんらトップクライマーのニーズを、カシオの開発チームが吸収し具現化した本格フィールド・ウォッチというポジションを獲得している。開発者の一人であるカシオの牛山和人氏(カシオ計算機 開発本部 時計統轄部 モジュール開発部 モジュール企画室)は、机上の数式を追うだけのエンジニアではない。休日のほとんどをロッククライミングを伴う登山に充てるほどのクライマーであり、「PRX-2000T」で開発した新型圧力センサーのテストのため、ヒマラヤで標高4,000mのトレッキングも経験し、竹内さんたちのアドバイスを実際のフィールドで体感しながら検証しつつ商品開発を行ってきた。

「PRX-2000T」
開発コードでもあった「MANASLU」という名は、世界に14座ある8,000m峰のひとつであり、1956年に日本隊が初めて登頂に成功した標高8,163mの山「MANASLU」(ネパール)に由来。ベゼルや裏蓋、バンドは軽く肌にもやさしいチタン素材を採用。耐磨耗性に優れるチタンカーバイト処理を採用している。方位・高度/気圧・温度が計測できる3種類のセンサーを搭載しながらも、厚さ11.3mmを実現し、世界6局(日本2局・独・英・米・中)に対応する電波受信機能「マルチバンド6」、蛍光灯の僅かな光でも駆動するソーラー充電システム「タフソーラー」などにも対応する

2000年に、「大画面」「かんたん操作」のツールコンセプトとして世に送り出したモデルを、その2年後に太陽発電のタフソーラーに進化させ、さらに3年後に電波時計へと進化させた。その後の商品開発の方向性を見出すため、PROTREKの開発アドバイザーである岩崎元郎氏が主宰する「無名山塾」に入会、休日には、体力と技術を頼りに岩壁と格闘するようになった牛山氏は、岩崎氏や竹内氏、アドベンチャーレーサーの田中正人氏らの意見を集約。こうして完成した現行モデル「PRW-1300」では、スリムのコンセプトを追求して成功した。

登山家・竹内洋岳氏(左)とPROTREK開発者・牛山和人氏

実際にこのモデルは、2007年に標高8,163mの「MANASLU(マナスル)」にチャレンジした竹内氏が、牛山氏に「このモデルに、ヒマラヤの8,000m峰を経験させることができるのは私です」と話し、パートナーの1つとして携行している。

酸素の薄い8,000m峰では、1分に1歩進むような状況となり、この薄さを実現したPRW-1300を竹内氏は、装着して登頂に成功している。牛山氏をはじめとするカシオの開発チームは、PRW-1300の次世代を担う頂上モデル開発のモチベーションが加速した。こうしてついに、PRW-1300の次世代機種であるPROTREK最高峰モデルが完成。それが4月にお目見えするプロフェッショナル・モデル、MANASLUことPRX-2000Tだ。同機種は二層液晶でありながら、薄型化を実現。世界6局の電波受信機能「マルチバンド6」を搭載するという、更なるステージアップが図られている。そこで今回は、竹内氏と牛山氏にインタビューを行い、PRX-2000Tの開発に至る経緯や搭載された機能、今度の課題などについて具体的に聞いた。……続きを読む