My Phone日本語版も同時提供予定、国内独自サービスの構想も

今回、OS自体がバージョンアップすることに加えて、さまざまなサービスの拡充が発表されている。目玉とされているのが、Windows Phoneに保存されている電話帳や画像といった情報をネット上のサーバーにバックアップする「My Phone」だ。現在は英語などの一部言語向けにベータサービスが提供されているが、日本語版の開発も行われている。越川氏は「6.5搭載製品が出るくらいのタイミングで日本でも提供したい」と話しており、国内でのWindows Mobile 6.5搭載機発売までには日本語版My Phoneの正式サービスを用意する考え。また、Windows Mobile 6.1向けにもクライアントソフトを提供する予定だ。

My Phoneは、Windows Mobile搭載機器に保存された情報を自動的にWeb上のサーバーにバックアップするサービス。電話帳、スケジュール、メール、画像や動画といった情報がサーバーと同期され、Webブラウザからも参照可能となる

同時に発表されたアプリケーション販売サービス「Windows Marketplace」は、Windows Mobile 6.5のみの対応となるが、こちらも日本語版のユーザーインタフェースを用意する予定という。アプリ販売というとAppleがiPhone向けに提供している「App Store」を思わせるが、マイクロソフトでも「Xbox Live」などでは大規模なコンテンツ販売の実績がある。そういった意味では、既に仕組みは存在しており、あとはそれをいつ携帯電話向けにも提供するかという時期の問題だったとも言える。 ただし越川氏は、日本では決済方法として「通信事業者による回収代行の形態を取れるようにしたい」と話している。携帯電話のコンテンツやアプリの料金を月々の電話代と合わせて支払うのが当たり前になっている日本では、決済用のアカウントを意識させること自体がアプリ購入に対する障壁になりかねない。ユーザーIDとパスワードを入力し、その後でさらにクレジットカードや電子マネーの番号を入力したり、決済用ポイントの減算操作をしたりといったプロセスは、PCのオンラインショッピングでは当たり前だが、少なくとも日本の携帯電話の世界では面倒な部類の操作だ。実現すればWindows Mobile用ゲームなどの販売に弾みがつく可能性も高い。

また、越川氏はMy Phoneについても「ただ日本語にしてそのまま出すだけではなく、できれば何らかの独自の付加価値を乗せてご提供したい」と話しており、例えば各社の絵文字や"デコメ"への対応など、日本における携帯電話の使われ方にフィットしたサービスとして提供できれば理想的だとしている。

徐々に表れ始めた「調布効果」

このように日本独自の機能を構想できることの背景には、2008年よりWindows Mobileの開発の一部が、東京・調布市の技術センターで行われるようになったという同社の体制転換がある。端末の開発にあたって通信事業者の意向が強く作用する日本では、数年前までスマートフォン市場そのものがほぼ存在しないという環境だったが、W-ZERO3シリーズの定着、Touch Diamondのヒットなど、現在ではWindows Mobileが一定の存在感を示せるようになった。

そして、HSDPAなどの高速なネットワークが安定して使用できる場所というのは、世界を探しても日本の都市部以外にはあまり見あたらない。日本では定額データ通信の月額料金は、絶対的な金額ではやや高いかもしれないが、得られる実効スループットを分母に据えて考えるとむしろ安い。開発チームも「日本には常に次世代のモバイルネットワークがあると考えて間違いない」(越川氏)という認識だという。スマートフォンの先進的な使い方が生まれる場所として、日本市場の重要性が同社の中で確かに高まっている様子である。