もうちょっと細かく見てみよう。先ほどの動画はそれぞれ約1分ほどの短かい映像だが、PhysXオンとオフとの違いは各所にある。メディアプレーヤーを複数起動して同時再生させることができればその違いがよく分かるだろう。まず冒頭のシーン。ヘリコプターから銃撃を受けガラスが飛散し、また銃弾が壁を破壊する。ガラスが飛散するシーンではPhysXオンの場合の方がより派手な効果となり、さらに割れた後も床を転がっていく。PhysXオフの場合は複数枚割れるガラスがどれも同じような割れ方をするほか、飛散したガラスが床に落ちても次の瞬間それが消えて無くなっている。銃弾が壁に当たる際のエフェクトもPhysXオンの方が派手だ。

PhysXオン:ガラスの割れ方に注目

PhysXオフ

PhysXオン:床のガラス、窓のカーテン、壁に当たる銃弾に注目

PhysXオフ

次はドアを開けビルの斜面を滑り落ちるシーン。ここでもヘリコプターからの銃撃でガラスが割れるのだが、PhysXオフでは飛散するのみ、PhysXオンでは割れたガラスが斜面を滑り落ちていくといった点で異なる。また、GeForce GPUによるPhysXオンとCPUによるPhysXオンとでは、どうやらガラスの破片の量が異なるようだ。GeForce GPUによるPhysXではより大量の破片が滑り落ちていく。

PhysXオン:ガラスの割れ方、その量に注目

PhysXオフ

PhysXオン:ガラスの破片が斜面を滑り落ちていく

PhysXオフ:ガラスの破片は見あたらない

その後しばらくは銃撃のエフェクトのみ異なるシーンが続くが、45秒前後あたり、ビルが建ち並ぶ間を抜けていく際の上空にヘリコプターがいるビルの屋上に注目して欲しい。PhysXオンの状態では空調機があるとおぼしきあたりから蒸気が立ちのぼっているが、PhysXオフではこれが省略されている。

PhysXオン:隣のビルの屋上から立ちのぼる蒸気に注目

PhysXオフ

このように、ゲーム中の表現のリッチ度で比較すると、PhysXオン>PhysXオフとなり、効果の量ではGeForce GPUによるPhysXオン>CPUによるPhysXオンとなる。そして、気づいた方もいると思うが、CPUによるPhysXオンの映像はややカクカクしている。CPUがPhysX処理にもっていかれるため、肝心なフレームレートが落ちているのだ。この種のゲームにおいてフレームレートが重要なことは言うまでもないが、CPUによるPhysXの場合、よほどの高性能CPUを搭載しない限り実用性は薄いと思われる。

さて、PhysXはこの他のシーン、表現でも多用されている。次の映像は先ほどとは別のステージで、建設中のビルの欄干を走るシーンだ。左手のシートが風ではためき、時に銃撃を受け大きくはためくがこれもPhysXによる効果のひとつである。PhysXオフではシート自体が無いことになっている。ガラスの飛散、蒸気(煙)、クロス(布)のほかにも、同タイトル中にはヘリコプターが巻き上げる風などでもPhysXが使われているという。

動画
PhysXオンでは工事現場のビニールシートもリアルにはためく
(WMV形式 10秒 3.52MB)

もちろん、PCがPhysXに対応し映像がリアルになったといっても、映画、工業レベルの映像がPCで楽しめるわけではない。依然として事前に計算処理したモーションも用いられると思われるが、それでもこれまで抑えられてきた演算量が拡大することで、ゲームプレイ中に受ける印象は大きく変わる。これは重要なポイントだ。