「ケータイがインターネットマシンになるのは4年前から感じていた。攻め一辺倒で、ワクワク、ドキドキなものを広めていく」。ソフトバンクモバイルの孫正義社長は30日、今年秋冬モデルの発表会でこう語り、携帯電話の機能とサービスの強化を積極的に行っていく考えを示した。
今回、ソフトバンクモバイルは16機種の新モデルを発表。携帯電話市場の飽和が叫ばれる中、KDDIはモデル数を7機種に絞ってきたが、ソフトバンクでは今回も豊富な機種とカラーを用意。孫社長は「他社は販売台数が落ちて戦略を変えているかもしれないが、(ソフトバンクは)攻め一辺倒」と話す。
孫社長は、携帯電話参入に向けた取り組みを始めた2004年ごろに、4年後ぐらいに携帯電話がPC向けの通常のインターネットを自由に利用できるインターネットマシンになると読んでいたそうだ。ソフトバンク自身はヤフーなどPCやインターネットの世界で成長してきた会社であり、インターネットの中心がPCから携帯に移り、携帯を使った方がインターネットを便利に使いやすいという時代が、「必ずやってくると感じていた」(孫社長)という。
その理由は3点あったそうだ。1点目が携帯のエンジンとなるCPUが高速化し、インターネットマシンとして利用できるようになる。2点目は通信速度が向上し、ネット利用に十分な速度になる。そして3点目が、画面サイズが十分な大きさになる。この3つの予測から、インターネットマシンとなると考えていたという。
かねてより孫社長は、アップルの「iPhone 3G」を毎日利用している話してきたが、その結果「PCを使ってインターネットを利用していた頻度が10分の1になったが、ネット利用の頻度そのものは3倍になった」(同)という。
普段は移動が多いため、デスクの前にいる時間が短く、限られた時間内でネット利用をしていたという孫社長は、iPhoneを使うようになって、「トイレに行く廊下で歩きながらiPhoneを使う」など、ちょっとしたタイミングでネットを利用しているため、頻度が3倍にもふくらんだのだそうだ。
また、孫社長はiPhoneで業務用のメールも利用しているが、日本の携帯ユーザーは「世界で最もメールを使う国民だと思うが、欧米ではBlackBerryを始め業務用メールが(携帯で)使われていて、(日本は)完全に後進国だった」と指摘。その上で、業務用メールを扱う携帯について「iPhoneが先駆けで、(今後)携帯全体がiPhone化してくる」と主張する。
そして今回発表された秋冬モデルは、発表会のテーマが「タッチ」だったとおり、タッチパネル付き液晶を搭載したモデルを一気に4機種発表。この4機種は孫社長の言うインターネットマシンであり、それがすべてiPhoneのように指でタッチして操作する形になっている。
孫社長は、PCに比べてiPhoneの方が直感的に使えるのは、「PCの操作はマウスで、手元と(画面が離れているため)遠隔操作になる」と話し、直接画面を触れるため直感的な操作性に優れており、PCよりもネット利用では使いやすいと指摘する。「(画面の)ズームイン、ズームアウトさえしっかりできれば、むしろ小さい端末の方がアクセスしやすく、PCより便利」(同)。
「AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH」(シャープ製)、「930SC OMNIA」(サムスン電子製)、「Touch Diamond X04HT」(HTC製)、「Touch Pro X05HT」という4つのタッチパネル付き携帯はそれぞれ、この孫社長の主張を体現するための機種ということになる。
孫社長は、新しい端末、新しい機能を次々と追加していく攻めの姿勢で、ユーザーに対して「ワクワク、ドキドキなものを広めていく」考え。割賦販売の浸透で端末の利用期間が延びていることから、「短期間で端末が陳腐化するのではなく、長いレンジでファンを開拓できるようにしたい」ことを狙い、端末が定番化するように製品の「ロングライフ化」「オープンプラットフォーム化」を進めていく意向だ。
「端末のデザインにこだわる、機能にこだわる、使い勝手にこだわる。テクノロジーもデザインもソフトバンクという世の中にしたい」(孫社長)。
また、経済状況が悪化している現状で年末商戦への対応を聞かれた孫社長は、「こういうときこそ、せめて携帯で楽しく過ごしていこう」というメッセージを打ち出す。それに加え、2006年から開始している割賦販売の満期(2年間)を迎え始めているため、機種変更が伸びてくるという予測だ。
満期を迎えたユーザーがMNPで他社に移行する可能性もあるが、同社では割賦販売開始前にテストユーザーを募っており、そのユーザーはすでに満期が過ぎ、その動向を見ている限りは「そういった兆候は今のところ見られない」(同)ということだ。