付加価値税を回避、低価格かつスピーディに市場へ

山寨機を生産する中小企業には、登録登記の必要も、ネットワーク入りするための許可証も必要ない。そのため、他のメーカーの製造工程をそのまま真似し、携帯電話製造に必要な材料を市場で買い、工場設備をレンタルし、手作業で組み立てをする。こうして、正規メーカーなら半年かけてようやく出来上がる新機種の携帯電話を、彼らは2カ月足らずで作り上げ、スピーディに市場へ送り出せるのである。

政府の関係規定によれば、正規の携帯電話が生産されるには、まず国家発展改革委員会(発改委)が審査許可した携帯電話ブランドが必要。その後、巨額の資金を投入してチップメーカーと携帯電話ソリューション設計企業からそれぞれチップとソリューションを購入しなければならない。

また、正規メーカーは、中国国内での物品の製造、流通および役務提供の各段階で発生する付加価値を課税対象とする17%もの付加価値税(増値税)を納めなければならないことになっている。山寨機が安いのは、彼らには携帯製造にあたって増値税や販売税を払う必要がなく、また、開発費や広告費、販促費もかかっていないためだ。

山寨機のコストは、ディスプレイの大きさや備え付けカメラの画素数などによって変わってくる。中国国内では、3インチディスプレイ付き携帯電話の生産コストは400元(約6,000円)前後。その内訳は、金型費が20元(約300円)、MP3プレーヤーや100万画素クラスのデジカメなどの基本機能を搭載した回路ボードが200元(約3,000円)、充電器、カメラ、鍵盤、CD-ROMなどの部品を含めてのコストが110元(約1,650円)前後、加工費が大体17~20元(255~300円)、ケースと包装費が50元(約750円)前後などとなっている。

出荷時の価格は450元(約6,750円)で、消費者は700~800元(1万500~1万2,000円)で入手できる。山寨機の生産コストがこのように安いため、中間マージンは出荷価格の50~100%にも達する。一個の携帯電話が生産されてから、メーカーは出荷価格の10~15%、全国レベル、省レベル、地区レベルの代理店は同価格の20~25%もうけるのだが、中でも末端の小売店のもうけが一番多くなっており、メーカーは買い叩かれているともいえる。