11月12日から15日まで中国・マカオでGSM Assosiation(GSMA)主催による「GSMA Mobile Asia Congress 2007」が開催された。基調講演の他に各メーカーによる展示も行われたが、コンシューマー向けの展示は少なめであった。その中から興味を惹いた展示を2点レポートする。

イタリアのTelecom Italia Mobile(TIM)はPolymer Visionと開発したモバイルデバイス"Librofonino"の展示を行った。5インチQVGA、16階調モノクロ表示の電子ペーパーを表示デバイスに利用しており、収納時は本体に巻き取って胸ポケットに入るサイズに小型化できる。端末にはGSMまたは3Gの携帯電話が内蔵されており、オンラインで電子ブックなどのデータを受信することも可能だ。

電子ペーパーを利用した携帯デバイス「Librofonino」。紙のように完全に開くことができる

ディスプレイ部分は薄い。半円の突起は折りたたむ際のヒンジ部分

ディスプレイを折りたたむことができる

折りたためば胸ポケットに入る小型サイズになる

電子ペーパーを利用したデバイスの最大の特徴は、電源オフでも表示状態を保てること。このため電源を切った状態でも画面を閲覧でき、電池駆動時間を延ばすことができる。展示には文字を表示した電子ペーパーのデバイス部分だけが展示されており、電源を接続していなくとも画面を読むことができることを実演していた。この状態でも半年程度は画面表示を保てるという。またコントラストがはっきりしているため、実際の紙を見ているような感覚で表示された文字などを読むことができる。さらに視野角も広く、画面を横方向から見てもはっきりと字を読み取ることができる。展示されていたデバイスは150gと軽量のため、単行本を持つよりも軽いだろうとのこと。

視野角が広く、実際の書籍のような見た目を感じる

電子ペーパーは電源を切っても表示状態をキープできる

操作は電源のON/OFFボタンとメニューキー、そして端末本体上で縦に4つ並べられた溝状のセンサーで行う。たとえば、このセンサー部分を指で左右にスライドするだけでページをめくることができるなど、操作も簡易化されている。現在の画面サイズは5インチで書籍を表示するのに適したサイズだが、2009年ころには一回り大きい7インチサイズを投入予定という。そうなれば書籍だけではなく新聞のようなコンテンツも利用しやすくなるだろうとのことだ。またカラー化は2010年ころの予定で、その際は動画の再生もサポートされるだろうとしている。コンテンツは電子ブックとして書籍やガイドなどのほか、たとえば広告をPush配信するといった「自動配信ちらし」のようなビジネスも期待できるだろうとのことだ。

TIMはイタリア国内だけでの販売を行い、それ以外の国では開発元のPolymer Visionが国別に対応することになる見込み。イタリアでの販売価格は未定だが、当初は多少高価なため、いわゆる"プロシューマー"向けとして発売する予定とのこと。2009年ごろには量産効果もあり価格も引き下がるだろうとのことで、そのころにはCDプレイヤーのようなマスマーケット向け製品として市場で発売されるようになるのだろう。

同社はこのデバイスの投入で電子ブックなどのコンテンツ販売を行うほか、音声通話以外に新たな回線利用を見込む。携帯電話の普及率が飽和に向かう中での新たな収益源としたい考えとのことである。そのため同社ではデモコンテンツを無償で定期的に提供したり、プリペイドでの利用も可能にしたりと、利用しやすい環境を提供する予定。