フィランドNokiaは23日(現地時間)、イベント「The Way We Live Next」を開催し、同社研究拠点のNokia Research Centerにおける取り組みと今後の方向性を語った。また、コンテンツ共有コミュニティ「MOSH」などの実験的取り組みについても進捗を報告した。
ベータカルチャーをモットーに
NokiaのCTO、Tero Ojanpera氏 |
Nokiaはここで、"ベータカルチャー"という戦略を打ち出した。同社CTOのTero Ojanpera氏はこれについて、モバイル市場は変化が激しく、「コンシューマーをどきどきさせるような革新的な新しい製品とサービスを常に開発するには、企業はさまざまなレベルでオープン性を受け入れなければならない」と説明している。同社は今後、学術、科学、開発者コミュニティの専門家と協業し、顧客との直接のやりとりを深めていく。その柱となるのが"ベータカルチャー"で、新しいアプリケーションやサービスを迅速にトライアルしていくことで、オープンなイノベーションを進めるというものだ。
これを推進するため、同社はWebサイト「Nokia Beta Labs」をリニューアルした。同サイトは新しいアイデアを共有するサイトで、技術に敏感なユーザー、アーリーアダプターを対象としたもの。今回、コミュニケーション機能を追加し、ユーザーが将来の開発プロジェクトの方向性に影響を与えられるようにした。
Nokiaは現在のモバイル市場について、以下のような点をトレンドとして挙げている。
- モバイルの技術革新を推進するWeb技術
- ナノテクノロジーとソリューション
- インターネットユーザーエクスペリエンスの進化
- NFC(Near Field Communication)を利用したモバイル決済とモバイルバンキング
- 電源技術
- スマートな接続技術と無線ブロードバンドの将来
Beta Labsでの取り組みとしては、携帯電話をWebサーバーにするアプリケーション「Mobile Web Server」をデモしている。同アプリケーションを利用して、「S60」をベースとしたスマートフォンをインターネットサーバーとして稼動させることで、遠隔から携帯電話のコンテンツにアクセスするといった使い方が実現されるという。
コンテンツ配信サービス「MOSH」がパワーアップ
この日、Nokiaはいくつかのプロジェクトや技術の進捗を報告している。その1つが、今年8月にローンチしたコンテンツ配信プラットフォームの「MOSH(Mobile Sharing)」だ。
MOSHは1対多数でコンテンツを配信できるプラットフォーム。開発者はこれを利用して、自分が開発したアプリケーションやサービス、コンテンツを配信できる。PCと携帯電話の両方に対応しており、すでにダウンロード数は600万回を数えるという。
今回同社は、アップロード・共有、ダウンロードによるデバイスのカスタマイズに次ぐ第3の機能として「SEEK」を発表した。SEEKは、ユーザーが自分の望むアプリケーションや機能、コンテンツをリクエストできる機能だ。挙げられたリクエストに対し、MOSHコミュニティ内で情報を交換したり、要件にあわせて開発するといったことができるだろうとしている。
同社はMOSHをユーザーのためのサービス、ユーザーが方向付けるサービスと位置づけており、SEEK機能の追加によりユーザー間のコミュニティ要素をさらに強化できるとしている。SEEKは12月14日に正式ローンチとなるが、米サンフランシスコで10月23日に開幕した「CTIA WIRELESS I.T. & Entertainment 2007」でデモを披露しているという。
このほかにも、携帯電話向けウィジェットの「WidSets」も披露している。Nokiaのリサーチプロジェクトから生まれたWidSetsは、S60などの端末で動くウィジェットで、モバイルインターネットサービスを容易に利用できる。すでに登録ユーザーは300万人に達しており、200以上のウィジェットが投稿されているという。
また、「Nokia N95」などのマルチメディア端末で撮影した文字をリアルタイムで翻訳するソフトウェア「Shoot to Translate」、携帯電話のカメラ、GPS、インターネットを使って関連情報を探すサービス「Point & Find」などを紹介している。
Reutersとモバイルジャーナリズムを推進
Nokiaはまた、速報ニュースエージェンシーの英Reutersと提携して進めている、携帯電話を利用したジャーナリズムの支援プロジェクトについても明らかにした。
ここで2社は、携帯電話で記事を作成し、テキスト、写真、動画、音声をパブリッシュするアプリケーションを開発した。ノートPCよりも迅速に記事や素材をファイルできるという。すでにReutersの一部の記者はこの夏より、同アプリケーションを搭載した携帯電話を使って、ニュース記事の作成を実験的に行っているという。
Nokiaによると、同プロジェクトはジャーナリスト向けだが、長期的には市民ジャーナリズム推進につながるとしている。